if 子供たち救出編



鉄の部屋から逃げ出し、サンジが蹴破った扉の先。思わず目を見開いた…だって、そこにはたくさんの子供達が居たから。


『え、なんで子供が……』


私達より何倍も大きな子供、小さい子や赤ちゃんまでもが居た。種族の問わない養護施設?そう、なのかな……?

私達を見つめる子供達は皆、不安そうな表情をしていた。そりゃ遊んでるところに突然こんな大人数が扉を蹴破って現れたんだ。子供じゃなくても驚く。私でも驚くよ。


「……もしかして、凍った人達!?にげてきたの?」


凍った人?なんのことだろう…。それぞれ思ったことを口にしては「謎が増えるばかりだ」と呟いたフランキーの言葉に心で同意する。鋼鉄の体に光が反射したその瞬間、目を輝かせ「ロボがいるー!」と勢い良くフランキーを取り囲んだ大勢の男の子。

ナミが近くの女の子に"凍った人達"のことを聞こうとするが、女の子はチョッパーを指差し「タヌキのぬいぐるみだ!」と叫び走り出した。

子供の群れから逃げ出したサンジに至っては、眉毛グルグル!なんて子供達にからかわれている。


『あはは、何これ楽しい!』

「笑ってる場合か!!誰か話聞いてー!!」

『可愛いじゃない。無邪気な子供なんだし、仕方ないよ。私達の個性が強いのが悪いと思います』


隣で大きく溜息を吐き出したナミに苦笑を浮かべる。ナミも分かっているようで、私と目が合い同じような表情をした次の瞬間、


「おい!!お主ら!!桃之助と言う子を知らぬか!男子でござるぅー!!」

『…あっちゃー……』


思わず頭を抱えた。生首の存在忘れてたよ、そう言えば桃之助くんを探してたんだった…あ、ちょっと待って、生首なんかが喋れば子供が怖が……時すでに遅しとはまさにこのこと。泣きながら逃げた子供達は物陰に隠れ、目を見開き生首を見つめていた。


「おいおい、お前ら!この施設のことを「待たぬかぁぁあッ!!」ッこの馬鹿!黙っとけ!!何も聞けなかったじゃねぇか!!」

『あぁああ、はいはいはい!サンジ落ち着いて!貴方も、その格好じゃ聞けるものも聞けなくなります!焦るのも分かるけど少し私に任せてください』


生首を持ち上げて、サンジに手渡す。ジェスチャーで静かにと伝えれば頬を赤くした生首は口をつぐんだ。それを確認し、子供の方へ一歩近づいた。未だに怯える子達を安心させるように微笑み、ゆっくりとお辞儀をした。

はあー、持ってて良かった。懐から花弁を取り出し、いつものようにソレを舞わせて踊り歌う。楽しくなるように、少しでも落ち着いてくれるように。

だんだんと怯えた顔色から笑顔が戻る。花を子供達へと飛ばし、女の子には頭につけてやる。徐々に物陰から出てきた子供達は手拍子をつけてくれて、涙ぐんでる子はもう誰も居なかった。


「わぁああ!お姉ちゃんすごーい!綺麗だった!」
「風使いのお姉さんだー!!」

『ふふ、ありがとう!あのね、聞きたいことがある、……っ!…チッ』

「追手が来たか!」


扉の方から響く足音は、静かになった部屋へと簡単に皆の耳へ届けた。数十人の気配に焦りを覚える。奥へ進めとフランキーの指示に、ごめんねと呟いて奥を目指し走り出した。

何故か私達のあとを追ってくる子供達は、船の有無を確認し、肯定の言葉を聞いた途端に放たれた"助けて"。それが引き金のように子供達の口からは次々と助けてが溢れかえる。

一度は足を止めたナミと私だが、急かすサンジに心を殺しナミは再び走り去った。

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