if 子供たち救出編2




「行くわよ、ラズア」


苦しそうな声で言ったナミに、一度腕を引かれ再度走り出す。

こんなにも胸が痛むのはいつぶりだっけ…覚えてないや。「助けて」「お願いお姉ちゃん達」その言葉が、声が、何度も頭を心をかき乱す。足が鉛のように酷く重たく感じる。


「…、お家に帰りたいよっ!!!」


少女の叫びに、ビクリと肩が震え、重たかった足が今度こそ完全に止まった。


「知ってるよ。この建物から出たことないけど、この島なにもないんでしょ…街もない誰もいない、だから誰も助けにこない。お父さんとお母さんに会いたいよッ!!」


あぁ、ごめん皆、私には無視出来そうにないよ。だって、子供好きなんだもん。振り向いた先には、目一杯に涙を溜めて私達に縋る子供達の姿。


「!おいおい、ラズアちゃん何止まってんだ!!」

「ラズア……!」

『ごめんなさい。皆先に行ってて。私…助けたい……いや、助ける』

「何言ってんだ、理由がねぇよ!!病気とも言ってたし、ここは病院かもしれねぇ!たった今会ったばっかで事情も分からねぇ。人助け家業じゃあるめぇし!」

『分かってるよ!!…でも、私子供好きなんだもん!泣きながら、助けてって言われちゃ無視出来ない!!それに此処が病院だなんて思えない。だって親に会えない病院だなんて、おかしいよ!こんな小さな子達が親にも会えないで、寂しくないわけないじゃん!子供にとって、親って何よりも大切で…子供の支えなんだよ、一番の……自分の味方なの、』


目頭が熱くなるのを必死に抑えては、睨むように私を見つめるサンジに微笑んだ。分かってる、分かってるよ我儘だってのは分かってる。それでも私は、助けたい。


「……そうね。子供に泣いて助けてって言われちゃ、もう背中向けられない」

「ナミさんまで!!」

『ナミ……』


「このままだと逃げられるぞ!ガキ共が邪魔だ!」
「構わねぇ!ガキごと殺っちまえ!!」
「しかしマスターが…!」
「逃げられるよりはマシだっ!」


聞こえてきた声に舌打ちを漏らす。サンジ達に背を向け、追って来た敵の方へと走った。やっぱりおかしい!病院や施設なら子供達ごと殺そうとするわけない!ッチ、お願い間に合って……!!


『くそがぁッ!!』


右手を前に翳し攻撃しようとしたその瞬間、物凄い風が背中から押し寄せた。何事かと後ろを見れば炎の柱に包まれたサンジが飛び上がっていた。その直後に、銃を構えていた男を蹴り飛ばす。


『…サンジっ!!』


それに続いてチョッパー、フランキーが次々となぎ倒して行く。大口叩いてた本人が出遅れちゃ意味無いじゃないのよ……!!


『風爆弾の雨 - ウィンドボムレイニー』

「風使いのお姉ちゃん!!」


私達より前に出たサンジ達の背中はあまりにも広く、かっこよくて頬が緩む。


「まったく、子供達にも、だけにも優しいラズアちゃんやナミさんも素敵だ!また惚れちまうぜ。チョッパーお前先行ってナミさん達のお供しろ。おいガキ共!綺麗なお姉さん達とカンフーダヌキについて行け!追手は俺が食い止める。
だが間違えるな!俺はお前らを救いたいと言うラズアちゃんの美しい心に答えるだけだ!ラズアちゃんに構われるお前らなんて大嫌いだ!」

『〜〜っ、私も残る!』

「ダメだ!ここは俺に任せてくれ。さっきは怒鳴って悪かったな。ガキ共頼んだぜ」


タバコの煙を吐き出し、笑うサンジ。数回私の頭を撫でては「行ってくれ」と前を見据えた。あぁもう本当にいちいちかっこいいんだから!!後ろから抱き着いて『絶対に追いかけて来て』と伝える。サンジの隣に立っているフランキーの腕にも抱き着いた。


『フランキー、ありがとう。怪我、しないでね』

「ったりめぇよ!俺を誰だと思ってんだ!」

『そうだったね、』


優しく背中を押されて、やっと私はナミのあとを追う。私の我儘に付き合ってくれて、応えてくれてありがとう。絶対に守るから。だから絶対追い付いて来て!!

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