サンジ/甘



ある、晴れた日のこと。ルフィ、ウソップ、チョッパーは釣りをしていてブルックは音楽を奏でていて、ゾロは寝ていてフランキーは工具の手入れ。

私はベンチに腰掛け、ナミとロビンにメロメロなサンジを見つめていた。まずは、ナミ。可愛い顔して案外凶暴なとこもあるが笑顔は可愛いしお茶目だしスタイル抜群。

次に、ロビン。大人の色気を存分に醸し出し、その立ち振る舞いはまさに大人の女。だが無邪気に笑えばこれもまた可愛い。そしてスタイル抜群。


「チートかよ……」


思わず零れた溜息に嘲笑する。そりゃ、サンジもメロメロになるよね。私が男だったら即恋に落ちてるよ。勝ち目なんて探す方がおこがましいってもんだ、そもそも仲間相手に私は何を張り合ってんだか……。

寝転がって空を仰げば、目が痛むくらい太陽が眩しく居心地が悪くて腕で目を覆った。


「どうしたんだい、マドモアゼル」

「っ!?」


気配なく近くで響いた声は、私の想い人で心臓が跳ねる。冷静を装い腕を退かせば、タバコとスーツが良く似合うサンジがそこに立っていた。もそりと起き上がり、また二人を見つめる。


「……や、チート級に美人で可愛いあの二人見てたら、元々ない自信を更になくしちゃって」

「ったく、何言ってんだラズアちゃんよ。ナミさんやロビンちゃんと比べなくったって、ラズアちゃんはラズアちゃんだ。俺からしてみれば充分、天使だよ」


大変良い笑顔であまりに優しく頭を撫でられたもんだから、うっかり何度目かの恋に落ちてしまった。本当に貴方は罪な男だよ……うん。


「もうやだ、サンジってば本当女心分かりすぎててやだ……」

「そりゃ光栄だな。さ、これでも食べてラズアちゃんの愛らしい笑顔を見せてくれ」


銀のフタを開いた中には、色とりどりのケーキが乗せてあった。甘いのが少し苦手な私のために、甘さ控えめだと言ってウィンクしたサンジに、また私は恋に落ちる。

死ぬまで何度この人に、恋へと落とされれば済むのだろうか。もう百は超えたはずだが、そろそろ許していただきたい。


「……すごく、美味しい」

「ありがとう。紅茶を入れてくるから待っててくれ」

「〜〜ありがとうサンジ大好きぃ…!!」

「あぁ、俺もだ。愛しのお姫さま」


軽く触れただけの唇なのに、おでこは驚くくらい熱を持っていて暴れている心臓に、気持ちは分かるよと心で頷いておいた。

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