変わる世界II / アレン


「眠らせるな」


慌てふためく中、突如響いた第三者の声は冷静そのものだった。カーディナルと呼ばれた男はアレンを抱きかかえて、「大丈夫、今治してあげるからね」と呟く。ゾクリと、嫌な鳥肌が立った。男の指が鋭利なモノに変形した途端、アレンは断末魔の叫びを上げた。


「貴様…っ何者だ!?」


リンクが縛羽を放ったときには、既に男はリンクの背後に移動しており頭を掴むと苦しそうに叫んだ。


『リンク……!!!』


走り出した私の腕を思い切り引き寄せたのは、アレン。発動させたアレンの技は男の頭を貫いており舌打ちを零す。私が殺ったことにすれば……!!

首を目掛けて今度こそ、回し蹴りを放つ。


『……う、そ……ッ!!…ガッ、は』


頭を貫かれたはずなのに、動き出した男は私を壁へと殴り飛ばした。私に見向きもせずアレンに近づいて行く。見えているのに、すぐそこに居るのに何故守れない……!!なぜ私はこんなにも弱い……!?朦朧とする意識の中、立ち上がろうとするが、頭を打ったせいか立ち上がることがやっとの状態。

それでも目の前のアレンは苦しそうに叫んでいる。


『い、や……アレン…アレンッ!!』


足を踏み出したその瞬間に現れたカラフルな扉。開いた扉からは色黒の男が出てきて、カーディナルを床へと思い切り叩きつけた。


『、……ティキ…?』

「少年を教団に戻した甲斐があったな。七千年…七千年だ。ついに見つけた!!」

『アレン!!!』


この際どうでもいい。助かったんだ、まずはアレンだ。ふらつくなんて言ってられない。足にムチを打ってアレンに近づく。


『アレン!!アレン…だいじょぶ、だいじょぶだから、ね、アレン、大丈夫』


ぎゅっと、頭を抱えるように抱きしめ、背中を擦る。何度も何度も大丈夫と言いながら。何が大丈夫かなんて、そんなもの分からないし理由なんて言えない…けどそう言うしかないと思ったから。

徐々に落ち着いてきた呼吸にホッとする。それでも背を擦る手は止めずに。ゆっくりと腰に回された腕に、緩く込められた力に、私もさらに力を込めた―――


ティキと姿の変わったカーディナルが戦っている光景を見つめる。ティキが劣勢になったとこでアレンが前へと出た。侵食しようとした際に記憶を覗いたらしく、クロスを殺そうとした場面をアレンは見たと言う。

私には何が何だかわかりもしない。クラウンクラウンでカーディナルを抑えていたはずなのに、嫌だと背くようにアレンの左手は変形する。


「僕は、クロス・マリアンの弟子だよ…?反吐が出るねおまえとの合体なんか!!」

「反吐、だと?アレエェエンン!!!」

『ふざ、けんなよ……ッ!!!!』


アレンの前に出ては、風爆を数弾飛ばし、風でガードするもなんの意味もなく思い切り、吹き飛ばされた。アレンの呼ぶ声を最後に私の意識は飛んだ―――


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