アレン/甘
コン、コン
音が鳴って数秒も経たぬうちに、中から愛おしい声が私の耳に届いた。その瞬間に自分でも飽きれるくらいに頬は緩み、心が弾んだ事実に本当に私は彼が好きなんだと改めて実感する。
ガチャ、と扉が開いた瞬間に待ちきれず目当ての人物に飛びつけば驚きながらも彼はきちんと私を支えてくれた。
「ラズア!?…ちょ、…お酒臭いですよ!」
「んー、ちと酔っ払っちゃった!」
今日は珍しく飲みたい気分で、酔っ払いたい気分だったのだ。たまにはそんな日もあるだろう、許してくれアレン。胸元に顔を押し付け確かめるように、心臓の音を聞いてはアレンの匂いを鼻いっぱいに吸い込んだ。
「アレンだぁ、」
「はい、僕です。良かった、きちんと僕の元へ来てくれて」
「ふふ、心配しなくても私はアレンの元にしか来ないよ」
どれだけ酔っても他の男や女の元には行かない自信はある。なんてったって酔ってしまえば好きな人の元へ行きたいそばに居たいと思うのは当然だろう。
「それを聞いて安心した」
頬を撫でる手に擦り寄り、上を向けば困ったようにだけど優しい笑みを浮かべているアレンに心がきゅ、と鳴った。好き、そう呟き唇へと唇を寄せれば触れる直前に「僕もです」と耳が拾い幸せが心と体を満たしてくれる。
小さく音をたてたキスに今更ながら羞恥心が込み上げ、また胸元へと顔を寄せれば察したようにアレンは笑った。
「どうしたんですか、珍しい」
「なんか急に恥ずかしくなった」
「いつもは僕が恥ずかしがるんだけど、レアだなあ」
確かに、と私が笑えば一緒にアレンも微笑む。アレンの笑った顔好き、と素直に呟けば驚いた顔からすぐにまた笑顔になる。
「僕もラズアの笑顔が一番大好きです」
どちらともなく触れた唇からは、温もりと優しさと愛おしさが全身に広がる。そして好きだと、何度も何度も唱えるんだ。優しく抱き上げられベッドへと運ばれて、ゆっくり下ろされる。
「なに?このまま抱いてくれるの?」
「……言わないでくださいよ。せっかくカッコつけてるのに」
「あは、かっこつけなくてもアレンはいつでもかっこいいよ」
「〜〜〜っ、たく、勘弁して。このままカッコつけさせててください」
「ふふ、仕方ないなぁ。特別だよ?」
ぬるりと入ってきた舌は、熱を帯びていた。離れないよう、アレンの服を握れば応えてくれるように背中から腕を入れ抱きしめてくれた。