if ナカノヒトゲノム
「フェ〜イ」
『……何してんですか、パカさん』
素直な疑問を投げかけた私の言葉にピタリと動きを止め、壊れたロボットのような効果音がつきそうな動きでこちらを見たパカ。
「…いえ、札が落ちていたので直したところです」
『…そっすか』
軽く会釈をして"女風呂"へと入る。欠伸を一つ零しながら、服を全て脱いだところで、ふと思い出した。視られているんだっけ……めんどくせえな。
いくら無気力といえど、何万人の見知らぬ奴らに裸を晒す趣味は流石に持ち合わせていない。タオルを巻いて髪を結う。
扉を開けて数歩……絶句した。
『…え、っと、なんで』
弾けるように私を見上げた四人。そう、四人……あれ、女風呂に入ったよね私……?あぁ、そういうことか。
『チッ、あのクソパカ』
「ね、猫さ」
「怖がりだにゃ〜、カリリンは」
ユズ、の声……に振り向こうとした瞬間に、勢い良く引かれた腕。勢い良かったわりに、ヒヤリとした岩に押し付けられる力は、さほど強くはなく同じような力で塞がれた口。カイさんの手をゆっくり退けては、息をつく。右肩あたりにある刺青、そっと見上げたら合う瞳。
『別に叫びゃしないわよ』
「そりゃあ、悪かった」
……悪いと思ってるなら、なんでいまだに近いのよ。チラと後ろを覗き見ると、皆顔を赤くしているだけ。いや、助けろ?!
「鬼ヶ崎、そろそろ、は、離れたらどうだ」
『よく言ったザクロ!』
「せっかくだから」
そう言った瞬間にどこからともなく出したナイフを、カイさんの首にあてがい私から離す。
「は、破廉恥だ!」
「顔面ゆでダコの奴が何言ってやがる」
「ち、ちが…これはマスクが蒸れて暑いだけだ!」
「だよなァ、取れや!!」
『なんでもいいけど静かにしないと「ねえ」…言わんこっちゃない』
青筋を立てたカリンが私達を見下ろしていた。そりゃあんだけ騒いで声を荒げれば、嫌でもバレるっての。まあ、庇ってやろうか。パカが原因だし。
『…あー、カリン?あのね、パカが女湯と男湯の札を逆にしてたんだよ。だから私たちが男湯に入ってきちゃったってわけ!私もそれに騙されたし』
男共をこれでもかというくらい睨みつけてるカリンに、肩を竦めながら伝える。後ろからボソボソとアカツキ君がお礼と謝罪を交互に呟いている。
「無駄にでけぇ」
ぽつりと放たれたアンヤの呟きに、風が私の横をきった。
「無駄ってなによ!!あと!ね、ね、猫さんの!!裸!男のくせに!見やがって!!一緒に入りやがって!!」
『ちょっと、怒るとこそこなわけ!?』
カリンの暴走を止められるわけもなく、温泉は殺人現場へと化した。あー、こんなとこヒミコちゃんが見たらパーンってしちゃうんだろうなあ。
「すみません、せっけんってありますかー……!?!?」
『あっ、』