if 僕のヒーローアカデミア



―――何処かの誰かがこう叫んだ。"人間は皆平等だ"って。人間は、皆、平等……?だったら、だったら何故…何故私の目の前には―――



『……ッ!!!』


ドクドク、と激しい心音と共に目覚めた。見慣れた天井に、徐々に心音は落ち着きを取り戻す。額に手を宛てがうが、びっちょりと汗が纏っていて大きな溜息を吐き出した。

目を瞑って数秒。再度目を開き、天井へと伸ばした手の甲を見つめる。


『…大丈夫、赤く、ない』


言い聞かせるように呟き、ふ、と力の抜けた腕は意図も簡単にベットへと縫い込まれた。物凄い脱力感、憎悪、虚しさ、悲しみ。それらを飲み込むように歯を食いしばるも、何の解決にも至らなくて、やめる。


『シャワー…浴びよ』


雄英高校、受験当日の朝。なんとも目覚めの悪い夢で起きた私の気分は、とてつもなく、最悪だった―――

◇◇◇

―――おー、でっけー建物。流石、雄英と言ったところか。事前説明などは、なんとなく聞いていた。というか、ひたすらテンションの高いヒーロー様の声は嫌でも頭に入ってくるわけだ。だから、また、彼の叫びと共に走り出したヒーロー志望の子達の唸り声も、私の耳は、拾ってしまうわけで。


ゆっくり歩く私など、彼等からは邪魔だと思われているかもしれない。目の前のことだけ、目の前の敵、だけ。


『暑苦しいのなんのって』


小さく呟いた私の声など、誰にも届きやしないのに。個性を使い誰よりも高く飛んだ私を見ている者は、居ない。
両手を前に出して、敵の位置を把握して、誰かが拳を振り上げたその瞬間…響いた轟音に上がる、口角。地に着く両足。


吹き荒れる砂埃を、ひと払いしては良くなる視界。壊れた、残骸ロボット達。私も案外暑苦しいかもしれない。


『…悪いね、お先』


唖然としている受験者達を、今度は私が追い抜いてやれば、やっと事を理解した彼等は動き出す。…もう遅いよ、私が全部、やるんだから。


全部、全部。……私が...!

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