if アイナナ
『やっほー!紡ちゃーん!』
「久しぶりだな、紡」
「遊乃さん!!それにハルさんも!」
心底驚いた顔をした紡は、目を見開いては固まっていた。まあ、顔出すって伝えてなかったし当然といえば当然か。久しぶりに会う紡はより可愛くなっていて、たまらず抱きしめた。
「…遊乃、そのくらいにしといてやらないと紡がショートしそうだぞ」
『え…やだ、うそ、ごめんごめん!』
「あ、い、いえ…きょ、今日はお二人ともどうされたんですか!」
『んふふー、紡ちゃんがマネージャーデビューするって聞いて…来ちゃった』
ちら、と紡の後ろに居る何故かバスケットボールを持ち2分前に見た紡と同じような表情をして立ち竦んでいる七人の男達。……とりあえず、笑って会釈したその瞬間
「「「SWITCHーーー!?!?」」」
「うるさ…」
片耳を塞いだハルがそう呟く。突如、金色の髪をした物凄い綺麗な顔の男が近づいて、私の手を取っては甲に形の良い唇を落とした。
「oh......ワタシはきっと貴女に出逢うために生まれてきました。初めましてナギと申します」
「おっと悪いね。うちの遊乃はそういうのに慣れてないんだ」
腰を引かれたと思うと、いつの間にかハルの腕の中で少し笑ってしまう。本当に過保護なんだから。続々と集まってきた男達に改めて挨拶をした。そしたら赤い髪の子にサインをせがまれた。かわいい。誰かに似てると思ったが、話しかけられたことにより思考は停止する。
―――色々あったオーディションも無事に終わり、彼等は《アイドリッシュセブン》となった。特別に彼等の歌を聴いたけど、確信した。
『(彼等は大きくなる。きっと)』
喜んでる姿を見てると、なんだか懐かしくなった。隣で見ていたハルの腕に私の腕を絡めると優しく笑ったハルがなんだよ、と零す。
『……彼等見てたら懐かしくなっちゃって。ハルちゃんと会えたのもココだったなって』
「ハルちゃんなんて何年ぶりだよ」
『ふふ、さあ、何年ぶりだろ。ねぇ、アイドリッシュセブンきっと瞬く間に上へくるよ』
「奇遇だな、アタシもそう思うよ」
ニヤリと笑ったハルはどこか嬉しそうで、私まで嬉しくなった。…ケーキたくさん買ってきてて良かった。
『よぅし、今日はケーキもたくさん持ってきたからお祝いがてら皆で食べよ!万里さんも社長の分もたくさんあるよ!』
「わ、わ…遊乃さんありがとうございます!!すみません!!」
『いいのいいの!たくさん買ってきてて本当に良かった。ホラ、紡も早く食べなきゃ男共に取られるぞー!』
「は、はい!本当にありがとうございます…!いただきます!」
『ほら、ハルも!』
「甘い物苦手って知ってるだろ」
『ちゃーんと、ハルちゃん専用のチーズケーキも買ってるよー』
「…流石だな、惚れた」
皆の笑い声が溢れる事務所は、幸せに満ちていて少し、涙が出そうになった。アイドリッシュセブン、貴方達はどんな歌をどんな笑顔を世界に届けますか。