if テラフォ

テラフォ

ぼやりと滲んだ視界は徐々にクリアとなって行き、見慣れない天井を瞳に映した。見える範囲で見回せば、頭はまだしっかりと働いていないものの病室らしいということは分かる。

「あぁ……」

思わず零れた声は掠れすぎていて、笑う。そうだった…生き残ってしまったんだ。成功率30%の可能性を勝ち取ってしまったんだ私は…。ほんの少しは期待していたのに、残りの70%と言う半分以上の死亡率を。

「そっか、ぁ……生き残っちゃったか」

嘲笑にも似た笑みが零れたところで、ドアの開閉音を耳が拾う。覆っていた腕を退ければ、少し驚いた表情をした日本人の男が立っていた。

「目が、覚めたか」
「……えっ、と、あー…小町さん、でしたっけ、」
「あぁ、小町小吉だ」

鉛のように重たい体を起こせば、焦ったように小町さんは私をまた、寝かせた。聞けば1週間程意識が戻らなかったようだ。私的にはあまり実感はないけど、この体の重みと怠さがきっと証明付けているんだろう。

「あの、「妹さんは無事だよ」……っ、」

その遮りは私にとって、私の命よりも大事な答えで結果だった。無事というたった二文字に、鼻の奥がツンとして、涙が溢れるのに時間などかからなかった。

「あっ……あぁ、よか、…!!!」

それ以上は、何も言えなかった。やっと言葉に出来たのは慣れ親しんだ母国語での" ありがとう "の一言。小さく笑った小町さんは何故かこちらこそと、そう私に微笑んだ。ここでやっと私は初めて生きられて良かったと思った。

どれ程泣いたのだろうか「落ち着いたか?」と温かいココアを片手に微笑んだ小町さんにもう一度お礼を伝える。あの日、泣くのは最後だと決めたのにあっさり妹が無事と言う言葉に誓いを破ってしまった。まあ、私と小町さんだけだし、ノーカンという事にしとこう……。

渡された数枚の資料に目を通せば小さすぎる文字と小難しい言葉の羅列に頭痛を覚え、なんとなく流し見する。そんな様子もバレていたらしく「簡単に説明するとだな、」嫌な顔一つしないで優しく教えてくれる小町さんは、きっと人柄が良いのだろう。

今回私に施術された生物のベースは鳥で、〜〜〜。

「〜〜〜、ですか」

「あぁ、ちなみに俺はオオスズメバチだ!一番カッコイイんだぜ」

無邪気に白い歯を見せて笑った小町さんに、あー、なんか違和感がないなと私もつられて笑う。またチラリと資料を眺めれば昆虫の写真と特質などがビッシリと書いてあった。これはきちんと覚えておかないと、きっと色々不利になる。

片手の掌を見つめ、グーパーと開いたり閉じたりするがこの体に昆虫のDNAが流れてるようには感じられない。改めて技術の凄さを実感する。最早ファンタジーの世界だ。

「……早速で悪いが訓練は五日後からだ。君と同じ年頃の子達も少なくないし、我々も全力でサポートする」

「小町さんに言われたらとても心強いです」

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