if 妖精の尻尾
FT
嫌な、予感がした。
大きすぎる扉がひとりでに開き、嗅いだことのある匂いを鼻が捉えた。
「お前、まさか」
「……ルー、シィ」
金色の髪をフードに隠し、彼女、二人目のルーシィは私とナツの名を口にし、力を貸してと呟いた。やっぱり、嫌な予感がした。
不意に倒れるルーシィをすんでのところで受け止め、ナツへと渡す。
ずっと、ずっと嫌な予感がしていたのだ。なんとも言えない、拭い切れない不安と黒いモヤがどこか心に潜んでいた。
未来から来たルーシィ、私達を見て涙を流し力を貸してと、そう言った。何で、どうして、フェアリーテイルに……何かが起こる…?
「っ……」
家族に…何かが起ころうとしている?それもとてつもなく、悪いことが。だって、私の予感がそう言ってる。
「おーい、ライ、置いてくぞー?」
ナツの声に弾かれたように顔を上げれば、少し離れた皆が私を見つめていた。目の前の、家族に何かが起こるの……?
「ライジア!」
珍しく大きく声を荒らげ、スノーは私に抱き着いた。少しよろめき首筋にしがみつくスノーを抱きとめる。
「大丈夫、大丈夫だよ。スノーが着いてる。大丈夫」
いつもそうだ、スノーは私の心情を読み取ってその小さな体で受け止めようと励まそうと一生懸命になってくれる。小さな手で私を撫でるスノーに、涙が出そうになった。うん、そうだよ、そうだよね、不安になったってどうしようもない。今はとりあえずここを出てマスターや皆にルーシィを取り戻して無事を知らせることだけを考えよう。
「スノーありがとう。ごめんね、もう、大丈夫だから」
ゆっくり撫でてやれば、私から離れジっと目を見つめる。ニコリと笑えば納得してくれたのか、はたまた安心させてくれるためか肩に乗り擦り寄ってきた。
「皆ごめん。お詫びに頑張ってこの地形を調べます!」
「えっ、でもライさん、それ物凄く魔力を消費するんじゃ……!」
「そうだけど、なんか早く出て合流した方がいい予感がするからね。頑張っちゃうよ!その代わりもし戦いになったら皆守ってね〜」
何度か深呼吸を繰り返し、地面へと手のひらを付ける。ゆっくりと目をつぶり、魔力を手のひらへと集中させ地面に張り巡らせるかのように一気に放つ。
バチ、バチバチッ、そんな音が響き頭の中には電流が作ったこの空洞の地図が出来上がった、が、何ここ広すぎだろ……。おかげで魔力のほとんどを持ってかれた。
「ありえない、広すぎ。ごめん、城の中までは分かんなかった」
「いや、十分だよ。ありがとう」
立ち上がると同時によろめき、それをナツが支えてくれる。一言お礼を言い先導するよ、と歩き出した。