取り合い、借りモノ

「桜華」
最近聞き慣れてきた声が私を呼ぶ。
扉の方を見てみるとイブラヒムくんがいて私に手招きをしていた。
「どうしたの?」
「いや〜古典の教科書わすれました。」
「なるほどね、ちょっとまってて」
私はロッカーから古典の教科書を取り出して、イブラヒムくんの方に向かうと立花が「あ、桜華〜古典の教科書貸して〜!」と元気よく言ったので、「いま、イブラヒムくんに貸そうとしてたんだけど…」
「ふーん?ヒム、刀也に教科書を借りれば?」
「は?俺、その刀也サンと知り合いじゃないんだけど」
「じゃあ、エクスから借りれば?」
「あの人が古典の教科書持ってると思ってんの?」
「全くこれっぽっちもなんなら教科書何も持ってなさそうとすら思うね」
「それはエビさんに失礼すぎな、てか、お前が刀也サンに借りればいいだろ。」
「刀也に借りるとジュース奢らなきゃなんだもん」
「いや、それはお前が悪くね?ジュースくらい良くね?」
「やだよ…だから桜華に借りるんじゃん」
と、二人で言い合いをしていて困った私が刀也くんの方を見ると、刀也くんも呆れていて、でも、鞄から古典の教科書を出して私に渡した。
渡された教科書を見ると黛立花と立花の字で書かれていて素直に渡せばいいのになぁなんて、不器用な彼を見てちょっと微笑ましくなった。立花の教科書を立花に渡すと、流石刀也!私の時間割把握してるとかヤバ!なんて感謝とも罵倒とも言えることを言っていた。私の教科書は、イブラヒムくんに渡した。「あざす」の言葉と共に立花と一緒に隣のクラスに帰っていった。

2020/09/09