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息を吐くたびに白い息が現れる。…そんな寒い日。
「あ……どうも」
「出る時間同じだったんだ」
「今日は朝練なので」
刀也くんはマフラーをぐるぐるに巻いている。
いかにも寒いので、といった様子で身震いした彼は私を見て驚いた素振りを見せる。
「そんな薄手で寒くないのか…?」
「カイロがあるから大丈夫だよ、刀也くんもいる?」
「……貰う」
私が寒いねと笑ってみればポケットに手を突っ込んだまま頷く刀也くん。
「立花は?」
「りりに一緒に行けって言ったよ、多分あいつならまだ寝てる」
「私もむぎに何か言っておけば良かったかも…」
私達の会話となれば大半は立花のことだ。
刀也くんは立花のことになると微笑んでいる。本人は知らないんだろうけど。
「じゃあ僕はこれで」
「うん、朝練頑張ってね」
学校が近くなってきたから刀也くんとは別れる。
先に通学路を進む刀也くんを見送って、彼の姿が見えなくなった頃に私もその後を追う。
少し温くなったカイロを握りしめて、学校まであと少しの道を急ぐのだった。"
22:53 実は2434沼ってる野口 "「立花、寝癖が酷いぞ」
「ん〜平気だよぉ…」
「それが平気じゃないんだよ」
ぽやぽやと未だに眠気を発している立花を咎めるようにしながら刀也は櫛を片手に立花の寝癖と戦う。
黛家の双子の朝は毎日こんなローテーションを繰り返している。
朝一から起きてランニングしている刀也とは対象的に立花はよく眠りよく食べるタイプだ。
…つまりよく寝坊する。そんな彼女を起こすのはもう刀也の役割と化している。
彼女に着替えを促し、時に手伝い、彼女の分の時間割を纏め、ご飯を食べさせる。
他にもたくさんやることはある。
「んん………」
そして放っておけば立花は眠ってしまう。
しかし刀也は妹の世話をしながら身の回りも整えている。
刀也なら出来る…というかあり得ないことも実現させてしまうのはこの双子らしい。
「ほら、行くぞ」
「わかったぁ…」
直したはずの寝癖がぴょこりと跳ねる。
登り始めた太陽が二人を静かに照らしていた。