21

「…どうしたのヒム、用事ならクラスでも聞けたけど」
「人が多くて話す時間もない癖に?」
俺の隣の席のヒム…正式名称は忘れちゃったけどとにかく隣の席のヒム!
「ヒムが呼んでるなら俺も話くらい聞くし!」
「ふーん…」
やれやれ、みたいな顔されたんだけど!心外だな!流石に俺は友達の話を聞き逃したりしないわ!
…ヒムは何だかんだ言って優しいのだ。休み時間になると俺の席に集まってくる人たちを何とかしてくれる。
「じゃあ聞くけど…どう思ってるわけ」
「…何を」
「……周りの女子のこと!」
「いやぁ…俺のこと邪魔なのかなーって…こんなこと言ったら怒られちゃうね」
最早ヒムの表情がやれやれ顔しかないのかというくらいこの顔をしているけど一応他にもあるのだ。
俺の前になると何故かこの顔しかしないけど。
「内緒にしてくれない?…バレたら血祭りにあげられそうだし」
「はいはい…」
そんな話をしているとピコンと通知音。
どうやら俺の携帯らしくヒムは早く見ればいいのに…なんて急かしてくる。
『刀子ちゃんを一人にしちゃ駄目だよ』
『今からショッピングモールに二人で行くから』
仄架のやつ…やりやがったな。
確かに俺が刀子を置き去りにしたことは悪い。
にしたって勝手に二人で………あれ、これは。
『デートすんの!?いいなぁ!!』
『いや…買い物だよ、本とか買うだけ!…何かほしいものある?』
『ないよ、二人で楽しんできて』
いつの間にかトーク画面を覗き込んでいたヒムはあいつらも大変そうだな…なんて笑っていた。
「いいなぁデート!」
「そんなに行きたいなら行けばいいのに」
「そうホイホイ行けるものじゃないし…くっそいいなぁ!」
携帯を閉まって俺は駄々をこねる。
一緒に帰ろうとしていた刀子は既に仄架に連れて行かれたし…暇なのだ。
「デートって簡単じゃないの?」
「当たり前だよ、だってデートって好きな人同士が行くやつじゃん!」
ふといいことを思いついた。
「あのさヒム…デートとは行かなくても、このあと出掛けようよ」
「は?二人で?」
「…当たり前じゃん、今ここに俺たちしかいないんだし」
「ーーーっ!」
さすがは俺、名案である。ヒムは驚いて言葉も出ない様子だし…これは勝ったな。
「いやバカだろお前!やっぱ本当にバカだ!」
「な、何で!もしかして用事があったとか…なら途中までなら送っていくけど…」
「そういうことじゃない!」
「ええ…?じゃあ何なのさ!」
一緒に行きたくないとかかなーなんてぼんやり考えているとそのうちヒムはほら!と手を差し出してくる。
「んえ…何その手は」
「行くんならとっとと準備しろ!」
「わ、わかったよ…」
機嫌が悪いのか、妙に焦っているヒム。
正直とても珍しい。レアである。
「体調悪いの?」
「な、何でっ!?」
咄嗟のことで声が裏返った様子。
何だか面白い。いつもは俺をからかってくるが今日ばかりは形勢逆転だ。
「顔が赤いよ」
「うっるさい!」
思いっきり背中を叩かれた。とても痛い。
イジられるのが嫌だからってこんなことまでする必要はないと思うなぁ…。
「ヒム〜バイオレンスな女の子って嫌われちゃうよ〜?」
「…お前はどうなの」
「お、俺?…んー、相手に依るよね…でも嫌いな人にならそもそも暴力も振らせないし…ある程度ならいいんじゃない?…詳しくは分かんないけど」
「…そっか」
少し照れ笑いをしたヒムを横目に俺達は街へ繰り出すのだった。