「あーつーい…」
ぬるくなった麦茶を飲み干して、ダメ押しのように呟いた。
考えても進まない夏休みの宿題と茹だりそうな暑さに脳はパンク寸前。
扇風機の前を陣取った癖に暑がるなんてと刀也に怒られそうだけど本人はここにいないのだ。好きにさせてもらおう。
「行儀が悪いッスね〜立花ちゃん」
「いいじゃん別に悪くても…ガクは駄目なの?」
「いや?俺は別に大丈夫ッスね」
「じゃあこのままで〜」
夏休みの宿題を終わらせない限り外出禁止、なんて刀也と約束をしてしまった私は助っ人としてガクを呼んだ。
桜華はいつも教えてもらってるし…なんか忙しそうだったからやめた。刀也なんてもっとだめだ。
まあ…なし崩し的に…ガクになった訳だけど彼は快諾してくれた。
「はい、アイス」
「わーい!ありがとうガク!」
少しずつ溶け始めたアイスを受け取る。
気付けば麦茶も新しいのが用意されている。
…見習ってほしいよ、刀也にも。
あいつは欲しいんなら自分でやれよ、なんて言って私に押し付けるんだもん。
悶々とした思いが募るばかり。
何も気づかない少女は呑気に寛ぐ。人の…男の部屋だというのに。
「アイス食べる〜?」
差し出されたバニラアイスは刻一刻と溶けようとしていて、戸惑う俺に向かって彼女は何してんのさ、なんて笑う。
暑い夏の日、余計に心臓の音がうるさい。
きっと彼女は気づかないままのこの苦しみ。
この醜い感情をを知られたくないと思うのと同じくらいに彼女が欲しくて堪らない。
独り占めしてしまいたいと、言ってしまえば楽になれるのだろうか。
それとも大人気ないと笑われるのだろうか。
彼女の前だけは頼れる“お兄さん”でいたくて、でもそれじゃあ駄目だと知っていて。
…笑いかけられる度に胸が痛む。誤魔化して、俺も笑う。
「暑いね、立花ちゃん」
「…うん」
今はまだ、この思いを隠したまま彼女の隣にいよう。
例え手遅れになってしまっても、俺が彼女を悲しませるよりはよっぽどマシだから。
…なんてありきたりな言い訳を並べて、膨らむ思いに蓋をして。
誤魔化したままのこの恋心、暴かれる日はまだ来ない。
いっそのこと、嫌いだと言われたら楽なのに。
彼女はそんなことさえ言わず俺の隣に踏み込んでくる。
その度に俺は心をかき乱されて、大人気なくなってしまう。
冷めやらないこの熱を何処に留めればいいだろう。
クーラーの温度を2度下げても熱いままのこの部屋の中。
まだまだ茹だるような時間、時計の針は丁度てっぺんに差し掛かった。