「今日だろ、お前が楽しみにしてた新刊」
放課後、耳元で呟かれたその事実…というかこいつ、私が楽しみにしていた漫画を把握しているというのか…?
確かに今日は待ちに待った新刊の発売日。
一人で買いに行くのが結局恥ずかしくて本屋に行くことは諦めたのに…なぜ知っているんだ?
「帰りに少し寄るところがある」
むすっとした顔の私には見向きもせず、刀也はズカズカと進んでいく。
主導権を握るのは基本的に刀也の為、私はされるがまま着いていくばかり。
「…ショッピングモール…?」
「お前、どこ回るんだよ」
「…んー…たくさん回りたいなぁ…」
ショッピングモールに来るのは久しぶりだ。
買うつもりはないけれど、どんなものが売っているのか見て回りたいと思っていた。
一人で回る時は本屋に行った後2、3店舗見るのがやっとだった。
今日は時間を気にすることはないと調子に乗って、ついあっちへこっちへと歩き回った。
たくさんのお店をぐるぐると見回り、今は一度覗いてみたかったファンシーなグッズのお店にいる。
(やっぱり、くまちゃんは可愛いなぁ……あ、これ……)
手に持ったぬいぐるみの目つきがどことなく刀也に似ている。
本人と見比べてやろうと後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
(あれ?刀也がいない……?)
いつの間にやら、はぐれてしまったようだ。
どこに行こうが必ず私の後ろにいるというのに、珍しいこともあるんだなぁ…。
周囲を見回しても、刀也らしき人物は見当たらない。
背が高いから人に埋もれていても、よく探せば見つかる。
それこそ女の子に囲まれていてくれたら、すぐに分かるのだが、それらしき集団もない。
(どうして、はぐれちゃったんだろう……)
―—ちょっと手洗いに行って来るからここにいろよ?
(……あ)
…思い出した。
私はあの時、「わかった」と生返事をしたような気がする。
多分そこから自分の世界に入ってしまい、ふらふらと歩き回ってしまったのだ。
…これはやばい。
とりあえず、待っていろといわれた場所に戻らなくちゃ。
自分の現在地をマップで確認すると、思ったより遠くに来てしまっていた。
イヤな汗をかきつつ、急いでその場を移動した。
(怒ってる……よね……)
もし怒っていたら、自分もお手洗いに行ってたと言えばなんとかなる!…と思う!
恐る恐る店の角からそっと覗き込む。
(いた!ん……?あれは…………御伽原さん?)
思いがけず、刀也と江良ちゃんとのツーショットを目撃してしまった。