「あの、すみません…迷子なのですが……」
私は樹を連れて迷子センターへと行った。
涙に濡れた男の子を見て、店員はすぐさま対応してアナウンスを流してくれた。
樹の名前と年齢、服の特徴がモール内に響き渡る。
「すぐにお迎えがきてくれますよ。それまで、ここで待っててね」
店員の言葉を聞いてもう大丈夫だと分かった樹は、こくんと頷いて、大人しく椅子に座って迎えを待った。
それでも不安なのだろう、強い力でギュッと私の手を握っていた。
(そういえば、私も刀也とはぐれたんだっけ?…もし、ここで刀也を呼んだら——ふふっ)
笑いがこみ上げてくるのを抑える。
だめだ。
迷子の呼び出しだなんて、そんなことをしたら絶対に後が恐い。
それに、今は江良ちゃんの誤解を解くのに必死だろう。
自分のことは気にせずイチャイチャしていれば良い。
あのまま見ておきたかったけど、2人の姿を見失ってしまった。
とても残念だ。
それに、めそめそと涙を流している樹を放っておくわけにはいかなかった。
(う〜ん、それでも2人が何をしているのか気になるなぁ……)
樹の迎えが来たらダッシュで戻って周辺を探しに行こう。
そして、待つこと数分。
迷子センターの扉がノックされて、人が入ってくる気配。
「樹君、お姉さんが迎えに来てくれましたよー」
店員の声に反応して樹は私のから離れて、呼ばれた方へと走っていった。
ギュッと握られていた温もりがなくなって、少し寂しく感じた。
「樹っ!!」
「お姉ちゃん!」
「もう、どこに行ってたの! 心配したんだよ!」
「ご……ごめんなさ〜い」
ようやく“お姉ちゃん”に会えて安心したのか、樹は声をあげて泣きはじめた。
私といた時よりも大きな声。
やはりすごく不安だったんだろう。
無事に保護者に会えて良かったと、胸を撫で下ろした。
(さて、私は刀也と御伽原さんを探しに……——んん? あれ? あれあれ?)
挨拶だけして去ろうと思ったが、見覚えのある制服。髪型。声。
もしかして——
樹を迎えにきた女の子は顔を上げた。
「あの、ありがとうございます……——あれ?黛さん?」
(なんで……御伽原さんが?)
刀也と一緒にいるはずの江良ちゃんがなぜここにいるのだろう?
私と目が合い数秒固まった江良ちゃんは、はっとしてポケットから携帯電話を取り出した。
「ちょっと、すみませんっ!」
断りを入れて、耳に携帯を当てる。
樹を片手で抱きかかえつつ、どこかに電話しているようだ。
ご両親に見つけたことを報告するのだろう。
きっとすごく心配しているだろうから、早くそうしてあげるのが良い。
しかし、江良ちゃんの言葉は予想とは異なる内容だった。
「もしもし、御伽原です! 今、迷子センターに来たんですけど、その……黛さんを見つけました!」
「……はえ?」
(私を見つけた……?)