「立花のクラスの出し物は何やるの?」
「えー…劇と…何だっけ」
「流石に僕たちは同じクラスじゃないから分からないぞ」
「わ、分かってるよぅ…」
うちの学校の文化祭は少し特殊だ。毎年発表会やら劇やらバンドなど何か芸術的なことを出し物として一つ強制される。
そのため発表するクラスはクラス中で2班に別れ、芸術分野とそれ以外で出し物を分けるのだ。
しかし人によってはどちらにも参加する生徒だっている。とりあえず芸術分野が必須なだけで出し物を出さないクラスだってある。
変なところでルールがしっかりしているのだ。少し感心した。
「そういう刀也達は何やんの」
「劇と喫茶店」
「メイド喫茶だよ…一応」
「ほんと!?絶対行くね!」
「お前が来ると厄介になるから来るな!」
今日は珍しく幼馴染3人で一緒に帰っている。
どうやら桜華と刀也の出し物が同じらしく詳しいことを話しておきたいんだとか。
にしたってうちのクラスは何を出すんだったか…忘れてしまった。
去年のことは覚えてるんだけどね。
今年のことはもうサッパリ思い出せない。最近のはずなのに。
…確か難しい話をしてたんだよなぁ…私に関係ないと思って寝ちゃったのが不味かったか。
「はいこれ立花の」
「…ありがとう?」
「その様子だとやっぱり忘れてる?」
翌日、アルスから手渡されたのは紙の束。
表紙には文化祭用台本(仮)と書かれている。
「ほらここ」
紙束を捲ったアルスは一つのページを私に見せてきた。
「現場監督、黛立花…?私、監督なの?」
「うん。立花はボクたちのクラスの演劇の監督、一緒に台本の読み合わせするんだよ」
「そっか〜がんばるね〜」
考えてたよりやりがいのありそうな仕事で良かった。ガヤBとかだったらどうしようかと思ってた。
「んぁ?ヒムって主役なの?」
「あー、台本書いてる演劇部の人が必死に勧誘しててさ」
「ふーん」
あのヒムが何かを上手に演じるなんて想像できなくて吹きそうになった。
ていうかヒムが主役の劇って何なんだろう…
文化祭準備の期間は今日を入れて2週間を切っていた。
「そういえばうちのクラスって劇以外に何やるんだっけ」
「えとねーリアル脱出ゲームだよ〜」
「本格的だなぁ…」
「ふっふっふ…ボクも携わるつもりだからね、詳しくは教えられないけど楽しみにしてて!」
自信満々にそう言うアルスの姿に少し嬉しくなる…成長したね。
「なんか変なこと考えただろ今ぁ!」
怒るアルスだったけど少しすればジト目でこっちを見ながらも矛先を収めてくれた。
口には出てなかったはずなんだけどなぁ…?
「ヒム!台本読み手伝ってあげる!」
「はいよ」
練習用に取られた教室でヒムと一緒に台本を読む。
その内容は千夜一夜物語、流石に私でも知っている話だった。
昔刀也と読んだなぁ…私が1000話分読むのに飽きちゃってそしたら刀也も読むのやめちゃって…まだ覚えてるかなぁ。
処女を一晩で殺しちゃうシャハリヤール王とお話の上手いシェヘラザードのお話。
今回はヒムとこころがそれぞれ主役らしい。
不思議と違和感は感じない。面識はお互いに無さそうだけど。
「よし、今日はここまで…私はこのあと他の所も見てくるから帰っていいよ」
気付けば長い時間ずっと二人で台本を代わる代わる通していた。
意外と上手いじゃん、なんてお世辞でも言ってあげないけど。
「…俺、まだ残るわ」
どうやら彼はまだこの部屋で練習してから帰るらしい…勉強熱心なこと。
「オーバーワークは身体に悪影響なんだからね」
「お前もな」
二人で笑い合う、確かに私もたくさん仕事しちゃいそう。それなりに責任感とかもあるしね。
「…また明日ね」
部屋の扉を締める。心配してくれる人もいることだし程々に頑張るとしますか!