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「ん〜」
大きく伸びをする。ずっと座って分厚い台本を読んでいたからか普段は動かさないところまでひどく凝ってしまったようだ。
うちのクラスは何故だが2つの演目を発表することになった。
それが『千夜一夜物語』と『アラジン』。
どちらも有名な物語であり劇には適しているだろうけど…
「う〜ん…誰がピッタリなんだろうなぁ…」
アラジンの配役は元々飛び入りのため未決定。
残り僅かな準備期間を練習に割いたとしてもこのままじゃ中々に厳しい結果になることは目に見えていた。
元々はアラジンも千夜一夜物語組がやってくれる話だったが如何せんキャラが合わないんだそうだ。
それを聞いた時は不覚にも笑ってしまった。
「明日みんなの意見でも聞こうかなぁ」
一人で悩んでても仕方ないと私は切り替えて次の問題点に目を向けた。
…そうして夜は更けていく。

「ん〜…」
「こんな所で寝たら明日起きれなくなるだろ」
「だいじょうぶだよぉ…」
ほぼ寝落ちしている状態と変わらない立花を無理やり布団に押し込む。
そんなに無理するな、とは言えなかった。
本人があそこまで何かに打ち込んでいるのはまるであの頃のようで。
だからこうしてこまめに気を利かせるくらいのことしか出来なかった。
たくさんの書き込みがされた台本がその証だった。
「…お疲れ様」
監督という仕事がどれだけ大変かを彼も知っている。現に彼のクラスの監督も日々大変そうに走り回っている。
しかし彼は演劇部の、言うなれば本職の人である。
しかし立花は何から何まで初心者、正解なんて分かるはずもない。
毎日こうして隣の部屋で夜遅くまで作業をして頭を悩ませる姿だけを見ている。
手伝ってあげたいとは思っても実際行動してしまえば立花のためにならないことなんて分かっていた。
幼馴染とも約束した、本当に頼られたときだけ手を貸せばいいと。
そうして今日も彼は妹を見守るだけに留めて僕は部屋に戻った。