気合い充分に空高く拳を突き上げる。隣で刀也が呆れたように笑う。
「今年は勝つからね」
「僕が勝ちますよ、今年も」
私達は双子だからきっと同じクラスにはなれない。
毎年負けてばっかりで悔しい思いをするけどそれで憎しみを抱かない辺り燃え尽きるまで戦ったなと笑えてくる。
「別に今はいつも通りでいいのに」
「…癖なんだよ」
太陽が照りつけてきて暑い、そんな夏の日。
刀也の手を引いて学校まで急ぐ。
「そんなに急いだって始まる時間は変わらないぞ」
「そういう問題じゃないのー」
昨日は楽しみすぎて眠れなくなりそうだった。
何とか眠った自分を褒めたい気分だ。
朝もちゃんと起きて偉い。
「とにかくっ、早く行こうよ!」
「…しょうがないな」
呆れた顔をしながらも手を振り解くことのない刀也はやっぱり優しい。
…本人に言ったらなんて言われるか分かったもんじゃないけど。
僕が結んだポニーテールが揺れる。
楽しそうに、愉快そうに跳ね回るその尻尾は掴んでもすり抜けていきそうで。
「ほらっ」
差し出されたその手に驚いて不意に彼女と目を合わせる。
僕と全く同じ色をしたその瞳は今日もまた爛々と輝いている。
そうして愛らしく彼女はにこりと笑い、僕がその手を握ったのを確かめるとまた歩き始めた。
今度は勝手に飛び回るような歩き方じゃなく、あくまで僕と同じ歩幅で歩いてくれているようだ。
「あのねー練習の時にねー」
会話は尽きることなく、話題は止むことがない。
それが煩わしく感じない辺り僕は妹と共に登校するこの僅かな時間が存外楽しいらしい。
昨日のうちに無理やり眠らせたのも少し早めに起こして準備をする時間を取らせたのも功を奏したらしく彼女の足取りは軽やかだ。
しかしそれは少し早すぎたかもしれない。
彼女はいつの間にか僕の手をぐいぐいと引いている。
これじゃあまるで散歩大好きなペットとその飼い主みたいな構図に見られてもおかしくない。
「…勝ちを譲るつもりはないからな」
今年も全力でこの妹を潰しにかかる。
その準備はとっくに出来ていた。
僕の言葉を聞くと彼女は満足そうに笑って。
「油断なんてされたら寝首を掻いちゃうからね」
本気で相手をするには充分すぎる難敵だった。
ああ、僕の妹はこんなにも本気らしい。
間近に迫った校舎を前に僕も改めて気合を入れ直した、そんな朝だった。