41

「大丈夫、完璧に演じきってあげるから」僕の顔を見て笑う立花はきっと気付いていないだろう。
その努力も、正当性も、何も知られないままこれから断罪されてしまうのだと。
「ごめんね、私が不甲斐ないばっかりに」
「そんなこと言うなよ!僕がお前を見殺しにしたんだ!わかってて…それでも!」
「刀也は何も悪くないよ」
何も知らない、偽善者ぶってる奴らはここぞとばかりに彼女を地獄へ落とすだろう。
罵詈雑言を浴びせ、彼女の価値を汚し、貶めて、悪は滅びたと笑うのだろう。
真実はどうだ、彼女は僕達のために命を賭して悪役を演じている。
「桜華も刀也も、みんな私が守るから…後はよろしくね」
自己犠牲なんてどこで覚えたんだよ、そんなことしたって誰も救われないことだって知ってるはずなのに。
「お前がいなくなったら…意味ないんだよ」
悲痛そうに顔を歪める立花、それでも立ち止まってくれることはなかった。
「もう、決めたの」
僕に手を振り、笑いかける。その仕草さえもう消えてしまいそうで。
「立花…!」
伸ばした僕の手は届くことなく空を切った。

嫌われ者の悪役を演じよう、そう思ったのはきっと偶然じゃない。
いつからかおかしくなったこの学校で反旗を翻すのは当然のことだった。
変革を嫌う癖して不平不満ばかり言う人を捻じ曲げて、抵抗して。
敵ばかり多くなっても、私達のしたことは正義だと、そう思うことしかできなかった。
一人、また一人と仲間は消えていく。
増えた傷に比例して私は一人になることが増えた。
どうにかして幼馴染と兄だけは守りたいと手を伸ばして、拒絶された。
いつもならそれが“演技”だとわかるはずなのにその日だけは何故だがおかしくて、そのまま勝手に傷ついて、手放した。
そうして一人になった。孤独に過ごした。
誰もが私を嫌った、誰もが声をあげて私を殺そうとした。
容易に投げつけられたナイフにボロボロになって、それでも立ち上がって笑った。
誰も私の傷には気付かなかった。
ただこちらを見るたびに悲しそうな目をした二人にだけは申し訳なさを感じていた。
「ごめんね」
心からの言葉、私なんかのことで心配させてごめんね。
私のせいで迷惑をかけてごめんね。
私のために泣いてくれて、ありがとう。
大好きだった人達のこと、守れたかなぁ…
私、頑張ったよね…
どんな罵詈雑言も心無い言葉も平気だけど、あの二人からだけは嫌われたくないからさぁ…
大好きな人、どうか泣かないで。
悪い夢だって、私のことを忘れて。
────幸せになって。