「大好きです、黛さん」
「そっかぁ、私貴方のこと知らないんだよねぇ」
「今から知ってください」
うっわーグイグイ来るじゃん…とは言わずに私は冷静に対処する。
「本当に無理」
ヤバい冷静じゃなかったわ、どうしちゃったの数秒前の私!
そうこうしているうちに壁際に追い詰められる。
私の悪い癖だ。考え事をすると周りが見えなくなるってよく刀也にも怒られる。
そうして知らない人の顔がどんどん近づいてくる、やばい。
正直かなりやばい、大声を出さねば…いやどうするべきか、誰かたすけてー!
「ちょ、何やってるんだよ!」
「あ、明那!」
恐ろしいよ…何なんだよ…なんで私なんだよぉ。
そういうのは私より刀也の方が向いてるよ…
まあ刀也に聞かれたら僕は男に恋される筋合いないが、なんて言われそうだけど。
経験値的には私なんかより絶対刀也のほうがあるもん。
…もしかして経験値も薄い私をわざわざ狙いに来たのか?
「私美味しくないです!」
「何言ってんだよ立花〜てか俺マジでナイスすぎな!」
「マジで明那が居なかったらどうなってたか…ありがとー!」
そのまま謎の人が立ち去ったこの校舎裏で明那と立ち話をする。
いや、私だって教室で話したい気持ちは山々なんだけどさ…
「刀也くん好きです!」
「すみません急に馴れ馴れしいのはちょっと…」
「ご、ごめんね…気が早かったよね…」
「全体的に無いです」
あいつ!なんだよ!同じ台詞を言うんじゃない!
経験値の差を見せつけるな!
「うわー、やっぱりモテモテだなぁ黛兄!」
「本命から手酷く振られろ!ばーか!」
「え、黛兄に本命とかいんの!?」
「え゛…いや、いつか振られろ、的な?」
「なるほどなぁ…立花がそう思う気持ちもわかるよ…」
てか私そいつの妹なんだけど、とは言わない。…あえて。
多分明那のことだ、また忘れているんだろう。
私は気にしていないから、後で後悔のLINEを送ってくるのだけは止めてほしい。
「俺ならとりあえず付き合うんだけどな〜」
「うっわ明那サイテー」
「いやいや嘘!そもそも俺に告白してくる奴なんかいないし!」
「…いるんじゃないの?明那って優しいしノリだっていいし人懐っこい!」
「嬉しいけど複雑だぁ…そういう立花の好きなタイプとかは?」
明那と一緒だと話題が途切れることはない。
楽しい時間がずっと、昼休みの間中続いていた。
そうしていつしか私は告白されたことなんて頭からはっきり忘れていた。
「好きなタイプはね〜私の面倒見てくれる人!」
「完璧に発言がヒモなんだよなぁ…」
「う、うるさいよぉ!」
昼休み終了の鐘がなるまでずっと同じ場所で話し続けていた。
急いで帰る私達、クラスが別れるその時まで共に話して、笑った。
…とても、楽しい時間だった。