「お姉ちゃん」
妹が私を呼ぶことなんて滅多にない。
そう私が思い込んでいるだけらしいけど珍しいことだ。
「どうしたのリリ」なんて聞けば少し悪い夢を見ちゃって、と私のパジャマの裾を掴む。
大人っぽい言い草をしていても妹はまだ子供なのだ。
「ホットミルクでも飲む?」
「うん…」
いつもは私と顔も合わせてくれないけどりりは本当は甘えたで本当に可愛い妹なのだ。
例え無視されかけてもそれだけは絶対変わらないと自負できるくらい。
それを言ったらさらにもう一人の妹であるりりむも可愛いし…うちの妹は本当に可愛い。
二人なら目に入れても痛くないなって思うんだ。とっても可愛い、自慢の妹たちである。
…閑話休題、ホットミルクを入れようとキッチンに向かう私をりりは引き止める。
「…待ってお姉ちゃん」
「よしよーし、私はここにいるよりり」
どんな夢を見たんだか分からないけどここまでりりが憔悴するのも珍しい。
優しく頭を撫でて落ち着かせてやると不安そうに私を見るりりと目が合った。
「…一緒にキッチンまで行こっか」
語らうことまでは出来なくても話くらいは聞いてあげられるだろう。
…こんな時くらいはお姉ちゃん面させてほしい。
りりの手を慎重に、優しく引けばそれにゆっくりとついてくる。
階段を一段一段降りた先のキッチンで、りりに見える場所で作るホットミルク。
「熱いからちゃんと冷まして飲んでね」
不思議と失敗はしなかった。しん、と静まり返ったリビングでりりの顔を見つめている。
「お姉ちゃんが…居なくなる夢を見たの」
「それで私に会いに来てくれたの」
控えめに頷くりり、いつもなら馬鹿にされるはずなのに。
「大丈夫だよ、私はりりのお姉ちゃんだから…そうでしょ?」
我ながら暴論だと思う。でも刀也みたいに納得させられる言葉も桜華みたいに気の利いたことも出来ない私にはこれしかなかった。
「傍にいるよ、りりが困った時も寂しい時も、ずっと一緒にいる…泣かないで」
その小さな身体を抱きしめる。嗚咽が漏れて、やっぱり大変だったんだな、なんて感じる。
姉は妹を守るものだから、私がこうして頼られたらちゃんと慰めてあげなくちゃ。
拙くても、ボロボロでも、大切な妹だもん。
「おやすみ、リリ」
私の腕の中で泣きつかれたのか眠ってしまった可愛い妹をおぶって運んであげる。
りりの部屋まで運ぶ力がなくて私の部屋に寝かせてしまったけどご愛嬌だ。
妹のためならソファーで寝るのも苦じゃなかった。
「おはよう……お姉ちゃん」
「…!おはようリリ、よく眠れた?」
「……一応」
いつもと同じ素っ気ない態度も今日は少し違うように感じた朝だった。
ソファーで身体がメキメキになったせいかもしれないけど、絶対それだけじゃないと信じたい。
お姉ちゃんぽくない、なんて馬鹿にされてもまだ姉だって名乗っていたいから。
…可愛い妹のためだもん。
「今日も一日頑張るぞー!」
目指せ立派な姉!
下に妹いなさそうなタイプ、なんてよく言われるけどいつか胸張って姉だとアピールできるように今日も精進しなくちゃ!