「おりゃおりゃ」
「や、やめろよぉ!人のほっぺたで…なんだよぉ!」
もちもちと伸びるアルスのほっぺたで遊ぶ。
一度手を止めて問題に目を向けると私の視界に何が映ってるのか察したアルスが大人しくなる。
どうやらこのままむにむにしていてもいいらしい。
「ありがとうねぇアルス…」
幼馴染とクラスメイトの密会を見てしまったのだ、全く穏やかじゃない。
「いや…まあボクは別にいいけど…立花はいいの?」
「はえ、何がよ」
咄嗟に聞き返してしまったけど別にそういうつもりじゃない…ただ私にも立場というものがあって…でもなぁ…
「…複雑だけど…そうするしかないよ、私には桜華の幸せのほうが大事だし」
「…そっか」
私の言葉を聞いてアルスを落ち込ませてしまった。
「ごめんねアルス、心配を掛けるつもりは無かったの」
「無理しなくていいよ立花、ボクは…わかってるから」
アルスは私の手を掴む、驚いて見上げた私の視界にアルスの青い瞳が映る。
「っあー…ごめん」
いつもと様子がおかしいとかそういう問題じゃないよね、アルスの目がガチだったもん。
少しして私が逸らすまでその状態は続いた。
「アルスさん〜!」
扉から厄介な奴が来たとばかりにアルスは顔を顰める。
一瞬私を心配するような表情をしたあとアルスはエビオの所へ行く。
別に気にしなくてもいいんだけどね、エビも用事あったみたいだし。
「あー…刀也になんて言おうかなぁ」
もしかしたらあいつも目撃しているかもな、なんて考えてやめた。
桜華のことだ、何かあったら教えてくれるに違いない。
私は桜華の味方なんだからな!そう簡単に刀也に情報を教えてたまるかよ。
「ヒムって…あの…本気なの?」
「は?」
突然黛は何を考えているのかそう口にした。
「いや違うよ、応援する気なんだけど…」
まるでこっちの様子を気にすることなく続ける。
一体何がどうしてこんな事になるのか分からないがどうやら俺はまた黛に勘違いされているらしい。
「もしかして桜華のことか?」
「えっ、まあ…そうとも言う…」
ふらふらとあてなく彷徨う瞳、合っているようだ。
「刀也にバレたら大変だなって思ったの!それ以外は特に意味ないから!」
嘘をつくのが下手なのか慌てふためくその姿は最早見慣れたものになっている。
もしかしてこいつ嫉妬したのかな、なんて考えてみてもそもそも黛のことだ。
嫉妬することさえ気づいてない可能性に思い当たってため息を零した。
「と、刀也くん…あの…」
「道理で立花の様子がおかしいと思ったんだよ」
刀也くんが怒っていらっしゃる…一体何でなのか心当たりがありすぎて謝るに謝れない…
「密会すんならもう少し人目のないところにしろよ」
耳元で呟かれた言葉、この様子だと普通に立花に見られていたんだろう。
逆にあの子が隠そうとしてくれた(隠せてないけど)ことに嬉しく感じる。
「普通に悩みを相談してたの」
「男と一対一で?」
これは何を言っても無実をはらせそうにない…
「ごめんね刀也くん」
私がそういうと同時に控えめながら彼の手が私の背中に回される。
そうして確かめるように刀也くんにぎゅっと抱きしめられた。
「どこかに行くわけないと思ってても心配なんだよ…」
本当に愛情表現が1か100かしかない、それでもちゃんと愛されてるってわかるあたり私も彼に毒されているのかもしれない。
彼をゆっくりと抱きしめ返す。言葉にはしなくてもこれが私の答えだから。