50

「それでねイブちゃん!」
「マジでおもろいんだよな、今度一緒にやろうぜあのゲーム」
俺の目の前で繰り広げられる実に頭の悪そうな会話。
どんどんと話題が切り替わる中でも楽しそうなフレンとエビさん。
俺はそんな二人にため息を零しながら何度目かもわからない台詞を口にした。
「俺が会話に参加してないのに何でお前らここにいるんだよ…」
何故3組のこいつらが俺の席まで来て話し始めるのかが本当に分からない。
「で明後日が俺で明々後日は立花な」
「…分かった」
隣の席で黛が明那サンと話している。
何の話をしているかまでは判別出来なくてもその様子が乗り気でない事だけは分かってしまった。
嫌そうにその瞳が伏せられ、そしていつもの表情に戻る。
「もう、聞いてなかったでしょ!イブちゃん!」
バン、と俺の机を叩いた音で一気に目の前の景色に意識が戻る。
気付けばいつの間にかフレン一人になっていてエビさんはどうしたんだよなんて聞いてみればアルビオは本命に行ったよなんて。
あの様子じゃアルスサンのところに行ったらしい。
「まあいいや、私の用事も済んだし〜じゃあ放課後ね、イブちゃん」
勝手に話して勝手に去っていく。やっぱり俺の反応は気にしていないらしい。
家が近いこともあって俺とフレンはほぼ毎日一緒に帰っている。
本題は帰りに言うらしい。なら来るなよ、なんて言えばいいんだろうけどそうしたら余計に面倒くさいことになりそうでやめた。
「じゃーね明那」
どうやら黛も話し終わったらしく明那サンに手を振っている。
俺の視線に気付いたのか振り向いて笑う黛。
「何の話してたんだよ」
ふいに、そう聞きたくなった。どうせはぐらかされると思っていたその問いかけは案外簡単に帰ってきて。
「バイトのこと」
なんて、解っていたことを返される。
黛のことだ、嘘はついていないんだろう。
じゃあなんでそんな顔するんだよ、なんて…聞けなかった。
へぇ、なんてありきたりな返事をして俺達はまた下らない話を始めた。
話の内容は覚えていない、ただ黛が目を伏せたあの一瞬の表情だけが酷く焼き付いていた。