「また私の勝ちだな、はぁ…敗北を知りたいよ!」
ひたすら煽り散らかす黛、俺に見せびらかしたテストの点数は97点、平均点を遥かに上回って、なんならうちのクラスで一番上の点数を叩き出している。
ルンルン気分の黛はテスト返却が終わったそのままの勢いで隣のクラスに突撃しに行くらしい。
「刀也〜!」
扉から一人の人物の名を呼べば人混みを掻き分けてそいつが姿を表した。
「みてみて、テストの点数!」
「…お前にしてはよく頑張った方だな」
「へへーん」
周りの目を全く気にせずこの双子は仲良く話している。
本当に双子ってこんな距離感なのか…?
何回抱いたかも分からない疑問の答えは出ずに諦めて、俺も目的を果たすべく彼女の名を呼ぶ。
「勉強?…私でいいんなら教えるよ」
快諾してくれる辺り本当に善人なんだなと笑えてくる、これには黛も懐くわけだ。
「桜華見て!」
「凄いね立花」
黛が子供っぽすぎるのか、桜華が大人なのか分からなくなってきた頃、ここにいるには少し珍しい奴の声がした。
「そこをなんとかお願いしますよ師匠!」
「エビくん教えるの疲れるからやだよぉボク…」
どうやらエビさんはまたアルスサンにウザ絡みしているらしい。最近は呆れたアルスサンをよく見かけるようになったと思う。
「教えてあげるよ勉強くらい!」
「マジで!?」
「桜華が!」
…前言撤回、黛はやっぱり子供だ。
桜華は黛の無茶振りに慣れているのか、エビさんが突然入ってきても全然問題ないよと笑っている。
そんな姿を黛も見習え、なんて思っていたらもういなくなっている。
実際天才の癖して変な所で放浪癖があったり子供っぽかったりして目が離せない。
いつだって話題の中心にいると思ったら急に消えてしまう、訳の分からない奴。
「テストの点で私が勝ったし一つだけ何でも聞いてくれるんでしょ〜?」
うーん、うーんと数秒間唸っていた黛は不意にその瞳を輝かせる。
…なんか嫌な予感がするんだが。
「デートしてくんない?」
「…マジで?」
「予定は空いてるからさ!」
この時の俺は気づかなかった、黛と話していて真面目に話題が通じることなんてほとんど無かったことに。
「やったー!んじゃ、あとはよろしくね!」
そのままかばんを持って立ち去る黛、詳細を聞くこともできず去っていくその姿を俺はただ見つめていた。
「…え、イブラヒムくん?」
やっぱり俺は黛に翻弄されることになるのかと自分を呪った。
「あー…何となく読めたわ」
とにかく黛のことは明日どうにかするとして。
今度のテストは俺が勝つしかないらしい。
これ以上翻弄されないように、あいつの手綱を握れるように。
「…とりあえず何か奢るわ」
「ありがとう…」
そのまま桜華を近所まで送っていく。
特に大したことは話さず、いつも通り互いの恋愛相談をするだけに落ち着いた。
ていうか俺達にはそれくらいしか接点がない。なのに…
「なんで勘違いするんだか」
「立花は肝心な時に鈍感だから…」
あいつをフォローする桜華の言葉もこのときばかりは擁護しきれていなかった。
とにかく頑張って、と応援された俺は何度目かも分からないため息を零すのだった。