「刀也怪我してんじゃん」
一瞬すれ違っただけで立花は僕の怪我を見抜いたらしい。一体どんな観察眼してんだよ。
「はいこれ絆創膏〜」
ぐいぐいと渡されたその絆創膏は男が付けるには些か度胸がいる…可愛い絆創膏で。
「りりむから貰ったんだ〜怪我したら大変だしね、あげるよ」
こいつは本当に下の妹達のことを気に掛けているらしい。
ていうか絆創膏貰うほど心配されてるってなんだ。
「りりむに自転車の乗り方を教えてあげようと思ったんだけどね〜失敗してコケちゃった」
どうやら僕の言いたかったことは顔に出ていたらしい。
「そもそもお前自転車乗れたのかよ」
「乗れるよ!小さい頃一人で練習してたもん!」
僕達の移動と言っても基本的には徒歩が多いため自転車なんて殆ど乗る機会がない。
それでも覚えていた方が何かと楽だからという適当な理由で乗り方を覚えた気がする。
確か立花は面倒くさいやら何やらと渋って僕の記憶の中では放り出していた。
まさか独学で練習していたとは思わなかった。
「似合わないね〜」
ニコニコと笑いながら立花はそう言う。
当たり前だろと呆れたくなる気持ちに蓋をしてありがとうと口にすれば気をつけてねと一言だけ。
怪我ならしないと言ってやれば立花は呆れ顔で。
「桜華に心配されちゃうよ」
なんて去り際に呟いて教室に戻っていく。
今日した怪我はバレにくい位置にあるからいいものの確かにこれが少しでも人目に付きやすい場所だったら…そう思うと肝が冷える。
立花も意外と周りを見ているんだななんて妙に感心した。
「りりむ…自転車なんかに乗って誰かとデートでもする気なのかな…」
「流石にそれは考えすぎなんじゃないの?」
今ではスイスイと自転車を乗りこなすりりむを影から見つめる私とお兄ちゃん。
「ちょ、どこか行くみたいじゃん…追いかけねば!」
妹が変な事件や事故に巻き込まれたら大変だしね、見守りの一環だよ。
渋るお兄ちゃんを引き連れてまだ速度のあまり出ていない、安全運転な自転車を追った。
「ここは…近所の公園だね、昔は立花も遊んだんじゃないの?」
「やめてよ昔の話とか!」
そうこうしているうちに目的地についたらしく邪魔にならない位置に自転車が置かれている。
しかし問題点はそこじゃない、りりむは自転車から降りて近くのベンチに座っている。
「あれは絶対人待ってる!!!」
ほらどうだとばかりにお兄ちゃんにみせてやればようやく認めたようで。
「…誰か来たみたいだね」
お兄ちゃんが指差す方向に目を向ければ見覚えのある少年の姿。
「ウヅコウ!!!!あいつやりやがったな!!!!」
彼は卯月コウ、私の後輩の少年だった。
「はい、じゃあ帰ろっか」
お兄ちゃんは一気に取り乱した私を見て察したらしくそのまま私の手を引いて。
懐かしい、あの日を思い出して無性に嫌になった帰り道。
「アイス買ってよ」
「…はいはい」
妹の成長を嬉しく思う反面、寂しくなった。
買ってもらったアイスはいつもより甘くて、少ししょっぱかった。