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「メリーあれ、イブちゃんと社ちゃんじゃない?」
「ホントだー…付き合ってんのかな」
ショッピングモールに用事があってメリーと一緒に回っていた時、見慣れたイブちゃんの姿と同級生の社ちゃんを見つけた。
メリーが冷やかしで付き合ってる、なんて言ったけどその距離は実際近い。
それはまるで本当に恋人の距離で。
「嘘、イブちゃん……社ちゃんが勿体無いよ!」
「だねぇ…ていうか僕イブラヒムは立花のこと好きだと思ってたんだけどなぁ」
休日に出かけるくらい二人って仲良かったんだぁと言うメリー、確かに私もそれは思った。
イブちゃんは元々女っ気とか全然無かったし好きな女の子の話も茶化しも効かなくて。
それでもやっと立花ちゃんがそうなのかな、なんて思えたんだけど。
「でも立花のことだし距離が近いのは仕方ないんだよねぇ」
「そうだねー…」
あの子がそういう他人の事情関係なく付き合ってくれるタイプで良くも悪くも目立ちやすい子だって知ってる。
だからこそイブちゃんとの関係性がそれっぽく見えたのもわかる。
確かに今の立花ちゃんとイブちゃんは隣の席だし自然とその距離が近くなってそう見えるのかもって。
それでも、疑問は積もって消えなくて。
隣のメリーも理解しようとして…多分私と同じようなことになってる。
だからといって本人に聞くのも、って感じだし。
「イブちゃんも幸せそうだし私達は遠く行こ、メリー」
「そうだね」
これは考えるための口実?それともあの子を傷つけないための保身?
どっちなのかは私にもわからない。
今立花ちゃんに会ったら全て言ってしまいそうだ。
…イブちゃんは立花ちゃんのことどう思ってたのかな。
それでもイブちゃんからたまに聞いた隣の席の女の子の話は本当に大切な人なんだなって分かる話だった。
実際会ってみてもイブちゃんがどう思ってるのかなんてすぐ分かった。
…今のイブちゃんはわかんないよ。
私の頭の中には初めて立花ちゃんに会ったときの表情が浮かんだ。
『ヒムにも友達いたんだね』なんて優しく笑う立花ちゃんの表情が、溢れた幸せが…今も焼き付いている。
「…フレン、立花には言わないでね」
「………分かってる」
今日のことは二人だけの秘密にしようねって約束してメリーと帰る。
いっそのこと夢だったらいいのに、起きた私の目にはメリーと買ったお揃いのブレスレット。
何とか昨日のことを忘れた気になって今日もイブちゃんとメリーを待つ。
どれだけ嫌になっても近所だからって仲良くしてる私達。
立花ちゃんの所とは違う、いつか離れる私達。
昨日のことなんて詳しく聞けないまま他愛ない話をして3人で登校した。
この時期にしては強い風がピュウと吹いた、そんな波乱の朝だった。