イブ イヤリング
「ヒム、これあげる」
意気揚々と俺の席に来たと思ったら黛はなにか物を押し付けてきた。
文句でも言ってやろうと思ったらそれはアクセサリー。
「なんでイヤリング?」
話を聞こうにも咎めようにも黛は桜華に会いに行ったのかクラスには既にいない。
ただあるのは押し付けられたイヤリングと申し訳程度の説明書。
手元のスマホで調べたらそこそこいいブランドのやつらしい。
どういう意図で贈ったのかさえ理解できないけど黛のことだ、どうせ理由も何もないだろ。
全く、何を考えてるんだか。
どうせ返そうとしたところで頑なに拒否してきそうだ。
…お返しくらいした方がいいよな。
「いや、これピザじゃねぇし」
少しは嬉しくなったが説明書の裏に黛の字でピザだけじゃ可哀想だしあげるよ、なんて書かれていた。
あいつらしい理由だななんて思う反面慣れてしまった自分が少し恨めしい。
しかし説明書には今度これ付けて一緒に出かけようなんて本当に小さい字で書いてあった。
…俺が見つけられなかったらどうしてたんだか。
それはそれで何とかしてきそうではあるけど…
黛の奇想天外な行動にはやっぱり慣れない。
エビ 腕時計
「エビくんにこれあげるね」
アルスさんが僕を呼んだと思ったら何かをくれた。
「…で、何ですかこれ」
「腕時計だけど…エビくんすぐ時間破るじゃん」
「分かってませんねアルスさん、僕は好きで破ってるわけじゃないんですよ」
「開き直るなよぉ!」
少し怒った様子のアルスさんを見るのが割と好きで、アルスさんが気づいてないからってたまに遊んでいる。
反応が中々に面白いのだこの人は。
「とにかく次破ったら当分口聞かないからね」
「それは酷いですよアルスさん!」
「エビくんが守ればいい話じゃん、簡単だね!」
お返しのように言い返してくるアルスさん。
全く痛くも痒くもないからいいんだけど。
しれっと今度一緒に出かける約束を取り付けてその場は別れる。
付けた腕時計の感触はやけにしっくりときて、次はちゃんと時間を守ろうかななんて柄にもなく思った。
明那 ブレスレット
「はい、明那あげる」
立花がほいと差し出してきた小さな箱。
高級感のある箱を開ければそこには綺麗なブレスレットが。
「お…俺にくれんの?」
「うん、明那のために買ったんだけど」
駄目だった?なんて聞いてくる立花に思わずそんな訳ない!と強く返してしまう。
戸惑う俺、そんな姿を見て立花は呑気に笑っている。
付けてみてよ、なんて言われてそのまま付ける。
何だか申し訳なさと勿体なさに苛まれそうだ。
「似合ってるよ」
馬子にも衣装、みたいな感じか…この様子だと俺にブレスレットなんだけど。
差し色で入った黄緑色に彼女を感じて少しだけ嬉しくなる。
手元で小さく存在を主張する色とりどりの宝石を大切にしようと誓った。
不破 スカーフ
「せんぱいにあげますね」
落ち着いた色のスカーフをおもむろに鞄から取り出して彼女は俺にくれた。
きちんとした包装をされていたようでしっかしとした折り目が綺麗についている。
目の前の彼女の取り出し方だけがおかしかったようだ。
手触りもよくて温かい…けどなんでスカーフ?なんて彼女に問いかけてみればせんぱいの首元が出過ぎなんで、なんて返ってきた。
どうやら彼女は俺の服装が少し気に食わなかったらしい。
言ってくれたら直したのに、と俺が言えば丁度せんぱいに合いそうなスカーフがあったので、なんて少し誇らしげにそう言う。
ありがとう、なんて軽く返した言葉。
彼女は珍しく嫌そうな顔をしなかった。
もち リング
「刀也くんにこれ」
桜華から渡された小さな箱の中には小型のリングと申し訳程度のチェーン。
「どうしたんだよこれ」
「立花と出掛けたときに見つけたの、刀也くんに似合いそうだなって思って…買っちゃった」
僕達は割と似合いそうだとかこれ着てほしいとかで贈り物をし合う。
それにしたってリングって…これは僕に早く送れってことなのか?
立花の場合絶対そうだと思うけど桜華は多分普通に僕に似合うと思って買ってくれたんだろう。
露骨すぎんだろ、とため息つきたくなる気持ちを抑えてありがとうございます、大切にしますねなんて耳元で呟いてやれば赤くなる桜華。
僕にリングなんて贈ったからこうなるんだよ。
桜華のサイズは把握してあるし僕は本物のリングでも作って贈ろうか。
お返しは何がいいなんて聞く余地もなかった。
ガク ネックレス
「ガクにこれあげるよ」
ででーん、なんて大層な効果音(立花ちゃんが言ってる)を出しながら一つの箱を取り出した。
少し乱暴に箱を開けるとそこには一本の綺麗なネックレス。
「ガクに似合うと思ったんだぁ」
俺は今日誕生日でもなければ何かの記念すべきこともない。
今日はただただなんにもない日なのだ。
サプライズか?なんて考えたが違うと思い至った。
そもそも彼女はこんな突飛な行動を進んでやる。
何なら今回のはただあげたかったからあげる、みたいな本能的な類いなのだろう。
つけてよーなんて言うものだから彼女の選んだネックレスをそのまま付ける。
キラリと小さなチャームが揺れてひんやりとしたチェーンの感触。
…ところで立花ちゃんは男にプレゼントを送る理由を知っているのだろうか。
そこらへんを気にする奴もいるからしっかり教えておこう。
この様子じゃ多分知らないだろうから。