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太陽のようなその笑顔、キラキラと輝く双眸…全てが僕を捉えて離さなかった。
「黛さん」
「うん」
騒がしく思われがちだが彼女は聞き上手で話し上手だ。
図書館にいれば静かにして本を読むのが似合うし騒がしいところなら場の空気を乱さずに盛り上げる。
いつの間にか僕の目は彼女に釘付けになっていて。
彼女が誰にでもその笑顔を向けるなんて分かっている。
彼女を好きな奴が多いことも、分かってる。
「好きです」
その表情が歪んだ。いつも笑顔ばかり向けている彼女の、初めて見る表情だった。
正直な話その表情にとてもゾクゾクした…否、興奮したとでも言うべきか。
僕の言葉で彼女の顔が歪んだその事実に、新たな扉が開いてしまったイケナイ感覚。
「あ、え………ねぇちょっと!」
気付けば彼女を壁際に押し込んでいて。
不安そうに僕を見る瞳も叫ぶ彼女も全てが初めてで、ただただ嬉しくて。
「た、助けてっ………誰か!」
彼女の声に呼応して扉が勢いよく開いた。
「…立花に何してんだよ」
ギラつく翡翠が僕を捉える。その時本当に自分が何をしたのか理解した。
いつもは優しい夕焼け色をした彼女も呆れたような表情で僕の横を通り過ぎた。
「…何に手を出したかちゃんと自覚しろよ」
吐き捨てるように悪魔のような双子の兄は告げた。
蝶のように彼女は花から花へ飛んでいく。
甘い蜜を吸い、その翅を大空へ広げて。
綺麗な蝶に触れることさえ許されない。
「立花、もう大丈夫だよ」
「桜華…刀也…」
ポロポロと彼女から溢れる涙。慰めるのは僕じゃない。
それが僕だったらどれだけ良かったか。
「…立花が怖がるので出ていってくれませんか」
夕焼け色の彼女もまた彼女を守るために牙を剥く。
情け容赦なく、残酷に。ただ一つの可憐な蝶を守るため。

「好きなんて分かんないよ」
ぼんやりと二人に告げた。
優しく背中をさすってくれる桜華がゆっくり考えればいいよなんて返してくれる。
刀也も別に焦って答えを出すことないだろなんて言ってくれる。
二人とも優しいね、なんて笑ってみれば無理して笑うことないんだよ、って桜華から返ってきた。
怖かったなら大人しくそう言えよなんて刀也も言ってくる。
…怖かった、のかな。わかんない。
ただ話が通じなくて、どうなっちゃうのかななんて不安でたまらなくて…
涙が溢れていた。その時初めて自分が震えていたことに気づいた。
桜華は優しく私を抱きしめてくれた。
「立花、私達はここにいるよ」
子供のように情けなく泣いて、怖がってた感情をそのままに吐き出した。
「よく頑張ったな」
刀也も珍しく私を撫でて、慰めてくれて。
帰りはいつもより遅い時間だったけどとっても暖かかった。
二人が側にいてくれることがとっても安心だった。