欠伸を噛み殺す、眠たさは晴れなくても一瞬の気休めにはなっているだろう。
トントンと靴底を揃える、気合を入れるのにはこれだけで十分だった。
チープな高揚感に酔って、掛けたアラームが鳴る前に起きてしまったのはご愛嬌だ。
準備していた服と荷物を確認して、朝ごはんをいつもよりゆっくり食べて。
いつもしてないことを丁寧にやっただけで非日常を感じられるんだから面白い。
「いってきます」
制服じゃない、頑張って桜華と選んだ私服も。
何日も前から兄達と一緒に確認して決めた鞄や小物やらも。
全部あの人にいつもと雰囲気違うねって言われたいから準備した。
驚いてくれるのか素直に褒めてくれるのかは分からないけど…きっと、喜んでもらえると信じて。
待ち合わせ時間が近づいてくる、大丈夫。
乗り換える駅だって刀也にちゃんと教えてもらったもん。
それにあいつならお前のミスくらい大目に見るだろ、なんて…言ってたし…
ああダメだ、やっぱり恥ずかしい。
私がいなかったらどうなるのかな、なんて気になって物陰からこっそり見る。
携帯を確認しながらチラチラと私の来るだろう方向を見ている。
ってあいつ…ナンパされてるよ、やばい…どうしよう!
ついていっちゃうのかな。
私より可愛い女の子なんていっぱいいるもんなぁ…