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…そんなの絶対だめ、あいつは…私のか、かれ…
「…待ち合わせしてるんで」
変にあいつの声が聞こえてくらくらする。
「あー…そういうつもりじゃなくて」
恥ずかしくて目が合わせられない、何でだろう。
たくさんイメージトレーニングしてきたじゃん!
「今日は…天気がいいね…」
つい口から天気デッキが出てきてしまってさらに焦る。
大人の女の子になりたくて頑張ったじゃんか、不相応に隣に立つのなんて絶対嫌なのに。
子供っぽい私がまだどこかにいるんだ。
「どうして天気の話すんだよ…」
「っえ、いやぁ暑いなぁ……みたいな?」
かっこいいねって素直に言えればどれだけ良かっただろう。
恥ずかしがりな私、子どもっぽくて意地っ張り。
…隣に置いてもらうにはもっと頑張らなくちゃダメなのに。
「い、イブちゃん…」
ふとフレンの呼び方が口から零れた。
ずっと私もそう呼びたくて、それでも恥ずかしくて。
「いや待ってごめん、忘れてちょっと!」
顔なんて見れない、服の裾ばっかり見てる。
申し訳ないなぁなんて思いつつ数歩後ろを歩くのも何か違うなって思いつつ続けてる。
「立花」
ただ、名前を呼ばれただけなのに心臓がとくりと脈を打った。
何回も恋に落ちてる、自覚してからもずっと。
大好きが溢れそうだから正直もうやめて欲しい…恥ずかしくて死ねる。
「これでおあいこな」
そうしてヒムは私の手を引っ張る。らしくないななんてお互い笑い合いながら。
「やっぱ俺の彼女ってお前しかいないなーって」
「私のか、かれ…もヒムだけだよ…」
顔が熱い、もしかしたら燃えてんのかもしれない。
訳分かんねーのなんて笑ってる癖して私を一番振り回すヒム、お前程じゃないなんて言わないでよ。
振り回してたのはずっと大好きだったからだし。
ヒムも恥ずかしがってくれるのかななんて、考えてチラリと見えた赤い耳に全てがどうでも良くなった。
…私の彼氏は君だけだから、目移りなんてしないでね。なんて耳元で呟いてもっと真っ赤にさせる。
お返しだよばーか、私だってただドキドキしてるだけじゃないんだよ。
赤くなった顔が証明、お互い大好きなんだななんて分かってるけど言わない約束。