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む、ムカつく〜。分かっていても軽薄そうな顔がムカつく!
お前の代わりなんてたくさんいるから、みたいに見せつけられてる感じがする!
本人はそんな気ないんだろうけどなんだかもやもやする。
「不破センパイ」
あくまで知り合いみたいな顔で近付けば驚いた顔しながらもすぐに対応してくれるせんぱい。
結局頑張って呼んだ呼び名さえアンタにとってはそんなもんだったってことでしょ。
「…じゃ」
もう一緒にいたくなかった、女の人に向けてた微笑みが焼き付いて離れない。
あのまま物陰から出なかったら良かったのかな、なんて考えてももう遅い。
「本当にごめん、でも俺の彼女は立花ちゃんだけだから…エスコートさせてくれませんか、かわいい俺の姫」
作ったようなその言葉に私の決意は揺らいで。
顔がいいなぁ、声がいいなぁなんて、簡単にその笑顔で溶かされる。
抵抗の意思を示すようにむすっとした顔だけは続けていても成すすべもなく抱きしめられて、子供っぽく戸惑って。
「かわいい服だね、いつもと雰囲気違ってかわいいよ、鞄も靴も細かい所まで気を使ってるんだね」
たくさん、褒めてくれる。欲しかった言葉は簡単にせんぱいの口から零れてきて。
他の人にも言ってるんでしょ、なんて面倒くさい私が顔を出してもそんな事言うのなんて立花ちゃんにだけだよ…なんて。
「せんぱいの一番になれてますか、私」
「これからもずっと変わらないよ、俺の一番は君だけ」
甘い言葉、口説き文句。今日だけは溺れたい。
遊ばれてるのかな、なんて考えても私を見る熱を帯びた瞳にはそんなこと考えられなくて。
「少しは嫉妬してくれた?」
照れ隠しにそんなわけ無いですなんて…バレてるんだろうけど。
「みなと」
それは私しか呼べない名前だから。
何度も何度も確認して、嫉妬した荒んだ心を貴方の熱で埋めて。
少しは大人のエスコートにも慣れられたらなんて考えて。
私の心をかき乱すせんぱいを、いつかは戸惑わせたくて。
盲目的に、感情的に、ただ貴方だけを求めてる。