「誕生日プレゼント決めたの?」
きっかけはその一言、聞いてようやくガクの誕生日近いな、なんて察した。
「一緒に買いに行こうよ〜」
「そう言うと思ってた」
呆れる様子も見せず、私の行動を分かっていたであろう桜華はサクサクと予定を立てていく。
この手のことは昔からずっと得意だったもんなぁ桜華。
私が夏休みの宿題を溜め込みまくるからなんて理由で夏休みのスケジュールを管理されたり、昔はよくしてた。
今は流石に私一人でできるよ。夏休みなんだし自分で自己管理だって出来るよ。…ほんとだもん。
「刀也は明日休みだよ」
基本刀也に予定を把握される側の私だけど向こうの予定だって耳に入ってくる。
あいつはあんななりだけど人気者だし、私はそんなあいつの双子の妹だし。
よく『刀也くんっていつ暇なのかな…』なんて聞かれるからあいつの大抵の部活の予定は把握するようにした。
それ以外のプライベートな事情は知らないけどどうせ刀也のことだ。
聞いたところでお前が忘れるから言わない…なんて意地悪言うんだろうからわざわざ私も聞かないようにしている。
「じゃあ明日にしようか、急で申し訳ないけど刀也くんには伝えといてくれる?」
「まっかせてよ!」
そうして刀也の部屋で帰りを待った、整頓された本棚から途中まで読んだ漫画を引っ張り出したりして。
「何でこいつすぐにフラグ建てるようなこと言うんだよ!」
気付けば完全に本題を忘れていた。
ただただ刀也の部屋に来て漫画を読んでいるだけになってしまっていたと気付いたのは恥ずかしいことに刀也が帰ってきてからである。
「…で、何の用事なんだよ」
「ガクのプレゼントだって」
大体の事情を察したらしい刀也がそわそわし始めた辺りで部屋に戻る。
あのままあの部屋に滞在していれば惚れ話を聞かされるのは目に見えていた。
…胸焼けしそうなあの甘さは少し遠慮したいところだ。
「…財布持ったか、携帯は?」
「ちゃんとあるよ!」
迷子になったら大変だからと二人に左右を固められた謎の布陣でショッピングモールまでの道を歩く。
道中桜華の服が可愛いと素直に褒められない刀也と照れる桜華のいちゃいちゃを見せつけられてキレそうになったなんて簡単に想像できるだろう。
ガクへのプレゼントを買いに来たんだからくれぐれも本題を忘れないでほしい。
デートをしに来たわけじゃないんだよ君達。
そんなことを考えながらもショッピングモールには無事に到着していて。
「わーいショッピングモールだ!!!」
「立花、人通りの多い所ではしゃいだら危ないよ」
「すぐにどっかに行こうとするな…ったく」
…覚えているとも、今日はガクのプレゼントを買うんだよ。
見慣れないショッピングモールにはしゃいでるとかそういうわけじゃないよ。
決してそういうわけじゃないから!
だからジト目で見ないでほしいな二人とも。
ガクの喜んでくれそうなもの…いくら考えてもまともなものが出てこない。
いや、これはもう仕方ないと思う。
実際にガクに物を渡した時のことを考えたら結局何を渡しても『立花ちゃんプレゼントくれるんすか?嬉しいなぁ〜』に落ち着くのだ。
何でも喜んでくれそうだし、何なら私がプレゼントを渡す、なんて言って空箱を渡してもそれはそれで喜ばれそうなのである。
二人はさっさと決めたらしく私が決め終わるのを待っている。
目に付いたそれを手に取ってそのまま会計に進む。
この感じは多分考えるだけ無駄だ、ガクの全肯定の罠に嵌りかねない。
頑張って選んだのだ、喜んでもらえると嬉しいなぁなんて考えながら帰路につく。
この際何でも喜ぶだろなんて話は聞こえないことにしておく。
雰囲気が大事なのだこういう時は。
「ケーキはショートがいい?それともロング?」
「髪の毛の長さを聞く感じでケーキに応用するな!」
私がボケて刀也がツッコんで桜華が笑う、こんなくだらない日常がたまらなく大好きで。
「私達で盛り上げようねお誕生日」
「年に一度だからな」
「きっと喜んでくれるよ」
ガクも一緒にいればもっと楽しいのにな、なんて柄にもなく考える。
…恥ずかしくなって石ころを蹴飛ばした。