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「誰彼構わずチョコあげる奴だって思ったわけ?」
「実際そうだろ」
黛立花は人気者だ、本人の自覚は無いにしろこいつを知らない奴がこの学校にいるとは思えない。
兄が有名だからとかそういう次元じゃない、こいつも人目を引くのだ。
類稀なる容姿を持ちながらも誰からも恨まれていない辺りそれは一種の催眠のようにも思える。
人を惹きつけてやまない、それもまたこいつの才能だった。
そんな奴に惚れてしまった俺は何度自分を恥じたことか。
「ばーか!」
明らかに装飾がきっちりとしている、手の込んだチョコレート。
「これが本命チョコだわ!」
べー、と舌を出しながら黛は俺にそのチョコを差し出してくる。
…醜い俺の嫉妬を鼻で笑って。
「彼氏気取りだったなら別にいいけど?」
「いんや、相手は俺しかいないだろ」
「なっ…うるさいなぁ!黙って受け取れよ!」
何だかやられっぱなしも性に合わなくて、勢いで言い返して。
赤くなったこいつの表情が見れるのはやっぱり俺しかいないんだなと改めて思い直す。
人気者だとか周りからの評価だとかどうでも良くなった。
ただ明日も明後日も馬鹿みたいにこいつとこうしてふざけていたいと思った。