ったアラームを止める、変な気持ちがして二度寝する気にはなれなかった。
ソファーで寝たからか少し身体が痛む気がするけど気のせいだろう。
ベットの上で小さく寝息を立てる少女を横目に俺は朝食の準備を始めるのだった。
「立花ちゃん」
その名を呼べばゆっくりと瞼は開く。
とろんとした瞳が顔を出せばいつもとは違う雰囲気の彼女が眠たそうに欠伸をした。
もう少し寝てたい、なんて彼女は甘えたな声で呟いて俺の袖を引く。
とても弱い力で俺の袖を掴んだまま、うつらうつらと船を漕ぐ彼女を何とかリビングまで連れて行く。
ぼーっとしたままの彼女は今にも二度寝を始めてしまいそうで。
手短に朝ごはんの準備をすれば彼女も何度か欠伸を繰り返して目を瞬かせた。
「…そっか、ガクの家に泊まったんだぁ」
警戒心なんて微塵もない、ただゆるりと事実を呟いて彼女は俺を見た。
翡翠の瞳と目が合う、逸らすことの出来ないその色彩に俺は魅入ってしまう。
でも俺がその瞳を見つめ返した途端に彼女は興味を失ってしまったようでふい、と簡単に逸らしてしまう。
…いつかに灰くんと話したことがある、彼女は動物に例えるなら猫のようだと。
初めは犬のようだとか蝶のようだとか散々揉めてしまったが結局猫に落ち着いた気がする。
彼女のその姿は何に縛られることもない、呑気で奔放な猫を彷彿とさせる。
それ程までに彼女は自由気ままなのだ。
「いただきまーす」
そんな彼女が今俺の元にいてくれる、それだけで優越感が満たされていくのを感じた。
彼女は他人の心を引っ掻き回す癖してその自覚はないと来た。
今更責任問題を問う気には到底なれないけど彼女は厄介なことこの上ない。
「毎日食べたいくらいの美味しさだよ」
無自覚なのか、彼女のことだからただ単に料理を褒めているんだろうが。
少し期待してしまう俺がいるのも事実で。
「いっそ一緒に住んでみるのはどうっすか?」
あくまでおどけるように言ってみれば彼女もそれに乗ってくれると信じて。
「うん」
帰ってきた答えは意外なもので、俺の予想していたふわふわとした回答なんかではなかった。
「ガクがいいなら私も一緒がいい」
寝ぼけているのかと何度も確認したもののそんな様子はなく、そこには至っていつも通りの彼女がいるだけだった。
「何でそんなこと言うんすか」
「一番最初におはようって言うのはガクにがいい、おはようって言われるのもガクにがいい…それだけじゃ、だめ?」
真剣な眼差しだった、嘘を言っているようにもからかっているだけにも思えない。
「……ご飯、冷めちゃうね」
今まで感じられなかった幸せ、それは朝から君の顔を見るということ。
満足そうに笑った彼女は一体何を考えているんだろうか。
彼女の知らない一面を垣間見る朝、俺はまた一段と彼女を好きになる。