私の幼馴染は二人いる。
彼らは双子で見た目そっくり、その癖して性格などは全然似ていない。
それでも大きな喧嘩一つせずに二人はずっと仲がいい。
「桜華聞いてた〜?」
辺り一面にその翡翠が飛び込んでくる。
これは彼の…そして彼女の色。
「ごめん、ちゃんと聞いてなかった…」
「まぁ許すけどさぁ、次やったら流石に怒るからね!」
桜華はぼんやりしすぎだよ!なんて言いながら先を歩く彼女…立花は楽しげに何処かへ向かっている。
行き先は分からないけど私も引き離されないようにと必死に付いていく。
私よりも立花の方がもっとぼんやりしていると思うけど肝心な時は立花が助けてくれることが多いからやっぱり私がぼんやりしているのは間違いじゃないんだろう。
よくえらちゃん達にもいわれるんだよなぁ。
「ひこうき雲じゃん、きれ〜」
ほらあれ、と指を指して彼女は空に目を向けていた。
その声色から彼女の気持ちが自然と伝わってくる。
「うん、綺麗だね」
その横顔を眺めて、ぼんやりと思う。
…彼ならどんな表情をしたのかな、と。
彼女と同じように笑っているのかも知れない、もしかしたらこんなひこうき雲には気付かないのかも知れない。
「怒るって、言ったよね」
いつの間にか彼女の瞳は私に向いていた。
酷く悲しそうに、何かを責めるように、縋るように。
「私じゃ駄目なの?…やっぱり、刀也じゃないから?」
吐き出されたその心情にどう返すべきか迷って、答えを焦って。
どうしようもなく、彼女の存在を彼に重ねてしまっていたことに気付いた。
「ごめんね…」
ちらつく彼の姿、目の前の彼女の顔が歪んだ。
しかしそんな表情さえ彼のように見えてしまうのは二人が双子だから?
…それとも私が彼のことを好きだから?
どちらが答えなのかさえ私には分からなくて。
「…今だけは独り占め出来たと思ってたのに…」
そして太陽が陰った。
雲に隠れて明るい日光が、あらゆる光が失われてしまう。
それは目の前の彼女も同じで。
「…無理矢理奪えばいいのかな、それとも忘れさせちゃう方が…」
「ま、待ってよ立花…」
「なんで止めるの?桜華は私と一緒にいる方が幸せなんだよね?」
その瞳は黒く、濁っているように見えた。
「今日の立花は何かおかしいよ」
「おかしくないよ?…それに、どうせすぐ慣れる」
そして端正な彼女の顔が近付いてきて…
「なぁんてね、こんな事になりたくないんだったら次からはぽやぽやしないこと!」
おでこがこつん、と触れ合って私と立花との距離が一気に近くなった。
「…どう?少しは私と一緒にいるって理解してくれた?」
雲の間から覗いた太陽が一心に彼女を照らしているようで、眩しかった。
それでも、不思議と嫌ではなかった。
「良い子だね…じゃあ次はどこ行こっか」
上手に手綱を握って、人の心を掌握するのに慣れていると思う。
というかそういう諸々に彼女は異常過ぎる程詳しい。
「…立花の行きたい所でいいんだよ?」
「むぅ…」
外向きの表情はすぐに崩れ去って、幼馴染としての幼いままの彼女が顔を出した。
無邪気に私の手を引いて笑うその姿がとても可愛くて、愛おしい。
「ちょっと待ってね〜…はい、ちーず!」
突然の掛け声と共に聞こえた音、それは写真を撮るときにシャッターが開閉する音の筈で。
「ちょ…急すぎるよ立花」
「しょうがないじゃん、今撮りたかったんだもん」
謎の理論でそのまま押し切られ、撮られた写真を確認することも叶わず。
それでもどこか満足そうに笑った彼女の表情がやけに鮮明だった。
「…独り占めだもん、これくらいの贅沢はしてもいいよね」
立花の小さな独り言が私の耳に入ることはなかった。