101

冗談を言えるようになった立花ちゃんに満足げに微笑んで、黛は彼女の頭を優しく撫でる。
私はぱっとドアから距離をとってそのまま踵を返す。
元きた道を戻って教室に向かって階段を駆け上がっていく。
心臓が、バクバクと音を立てた。
私はとんでもない思い違いをしていた。
彼が小姑?まさか!
守るように抱きしめて、慈しむかのように見つめて、恭しく傅くなんて男が、小姑のはずない!
さっき見た光景が瞼に焼き付いて離れない。
ああ、なんて幸せな光景だったのだろう。
そうだ、ひとつひとつ思い返せばその眼差しも言葉もその腕も常に彼女一人に向けられていて、彼女を笑顔にさせ、守っていた。
小姑なんて笑ってしまう。
彼が、彼こそがまさしく彼女のヒーローだったのだ。