ああ、私死んだな。悲観的ではなくあくまでそれは事実として私の前に突き出された。
助かることはないのだと確信する。
猛スピードで突っ込んできたトラックに轢かれたのだ。
空を舞う、そうして身体が弾き飛ばされて地面に落ちるまでの一瞬に様々なことが頭をよぎった。
両親、兄、妹たちに先立つ不幸を許してほしいと、その言葉に全てを込めて切に願った。
そして幼馴染と、双子の兄に申し訳ないと思った。
私が死んでしまえばあの二人は泣けないだろうから。
けれど何より、いま二人が隣にいなくてよかったとひどく安堵した。
車は法定速度を無視したスピードを出していた。
いつものように二人が隣にいたらきっと巻き込まれて、最悪の場合3人とも命はなかっただろうから。
私だけで、よかった。そんな罰当たりなことを思った。
一瞬が永遠のように感じられた。
記憶が濁流のように私の中になだれ込んでくる。
幼い日に喧嘩した思い出が蘇ってくる。
忘れていたその数々を取り戻してようやく、走馬灯って本当にあるんだと冷静に思った。
それから何度も懐かしい記憶を逡巡した。
しかし時間は無情にも巡り、季節は変わり、移ろった。
終わりは近いのだと悟る。
また明日と笑ったついさっきの私達の姿がよぎる。
ごめん、私は明日に行けそうにないや。
本当はもっと隣にいたかった。
たくさんの思い出を作って笑い合いたかった。
最期に見る走馬灯だって今よりもっと輝いたたくさんの思い出で彩られると信じていたのに。
けれど案外呆気なく人は死ぬもので、私の人生はここで幕を閉じるらしい。
叶えたかった夢も、迎えたかった明日ももう来ない。
それでも、神様に世界平和なんかを祈ってみる。
唯一の心残りはあの二人の子供を見れなかったことかな。
刀也みたいに真面目だけど人には優しい、それこそ桜華みたいな子供。
…見たかったなぁ。その子はきっと私にも懐いてくれるんだ。
それでも、どうか幸せに健康に生きてほしい。
私に縛られることなくどうか自由に。
…嘘、私の分まで生きないと許さないからな。
自殺なんてしようものならずっと呪ってやる。枕元で呪詛だって吐いてやる。
私の人生、思えばいつだって隣はあの二人がいて、それが当たり前で。
…まだ、生きたかったなぁ。
地面にぶつかる嫌な感触がした。
脳内麻薬のおかげか痛くはない。
目を開けているはずなのに何故か視界は真っ暗で、私の身体から出たであろうぬるい液体と手のひらから命がこぼれていくような感覚があった。
いよいよ薄らいでくる意識を何とか手繰り寄せて、最期に考えるのはやっぱりあの二人のこと。
…偶に思い出して仏壇に好物でも供えてほしいな。
そうやって時間が全てを解決してくれることを願って、ゆっくりと瞼を閉じる。
悔いのない人生だったと、そう思いたい。
我ながら潔い終わりだと思う。
きれいな死に方では到底ないけど。
…そうして私は命を落とすのだ。