自分の髪が重力に沿って落ちてくる。
ついてないなぁ…髪の量が人より多くて、髪をまとめる時はしっかりしたゴムを使うようにしていたのだが、今日は持ち合わせがなく友人に髪をまとめて貰った時のゴムだった。よくある見えにくいゴムだ。二つ結びの髪は途端に少しみすぼらしいものになり、解く。
体育、これからなんだよなぁ…時計を見ると5分前。立花は、あまり結ばないけどひとつくらいは持ってるかな…ジャージのチャックを引っ張って口元を隠す。あんまり、下ろしてる姿を見られたくなくて、2組を覗くとイブラヒムくんと話してる立花。あー…邪魔しちゃ悪いよなぁ…と思いつつ、この髪のままではまともに運動ができない。背に腹はかえられないしなぁ…と二人を見てると、視線に気づいたのかイブラヒムくんが私を見て、立花に教えてくれたようだった。
「あれ、桜華どうしたの?髪下ろしてるの珍しいねぇ。」
「立花ゴム持ってる?実は切れちゃって…」
「あったかなぁ…」
と、鞄を漁る立花。でも、持ってなさそうで申し訳なさそうにごめんねぇと言葉が帰ってきた。ううん、大丈夫。探してくれてありがとうと2組を後にしようとすると、
「あれ、何してるんです」
1組の教室から刀也くんが出てきた。
「ゴム、切れちゃって…立花が持ってないかなぁ…と思いまして…」
呆れたような珍しそうな顔をする刀也くん。
「そんなことするの珍しいですね。ちょっとまっててくださいね」
そう言ってロッカーを開けて何かを探す刀也くん。でもお目当てのものはすぐ見つかったようで、「ほら、これ使ってください」と可愛らしいポーチを渡される。
ポーチを見ると、普通のゴムと折りたたみの櫛も入っていて、あぁ、立花の為の奴だと分かり、ふふっと世話焼きの幼馴染が愛しくなった。
「じゃ、立花のやつ借りるね。ありがとう刀也くん」
借りた和柄のポーチをもって、体育の授業に参加したのだった。
「別にあいつのためだけじゃないんだけどな…」
走り去っていく幼馴染の背中を見て独り言ちる。その真意は、幼馴染に聞こえることは無いだろう。
2020/09/11