「もうすぐクリスマスだね」
「だねぇ…バイトが忙しいよ…」
バイト楽しいけど忙しいのはやだ…とは立花らしい。
とはいえ辞める様子もないし何だかんだ楽しんでいるみたいで安心した。
この様子だと当日も立花はバイトで忙しいだろうし刀也くんは平日だし部活だろう。
パーティーをする予定はあれど毎年のようにツリーを見に行ったりは出来そうにないか。
わざわざ二人に気を遣わせるつもりもない、かといって一人で見に行く気にもなれない。
当日は二人が来るまで家にいようかな、外は寒いらしいし風邪を引いたりしちゃったら大変だ。
携帯が震える、差出人は刀也くんからで部活終わったから、といった旨の連絡が来た。
…今から家に行く的な連絡なのかな。偉いなあ。
とりあえずお母さんに刀也くん今から来るってと報告すれば何故だか驚いたような顔をされた。
「お姉ちゃん、着替えないの?」
痺れを切らしたようでついにむぎが私に疑問を投げかけてきた。
答えようと口を開いた時にチャイムが鳴った。
「ごめんねむぎ、刀也くんかも知れないから」
話を中断して玄関に向かう。鍵は空いてるから入ればいいのにちゃんとチャイムを鳴らすのは律儀な彼だけ。
そうしてドアを開けたら不用心だなんだと私を叱るのだ。それがいつものこと。
「…着替えてなかったのかよ」
「え?」
「行くんだろ?」
何に行くかは分かってる、けど。刀也くんがこうして来てくれただけで嬉しい。
うん、だから。理由を付けて刀也くんを言いくるめようと頭を捻る。
「あいつも待ってるんだから」
「…立花も?」
「他に誰がいるんだよ」
等身大の刀也くんの笑顔、幼馴染の彼のそんな顔にまた胸が高鳴る。
刀也くんの方が何枚も上手だ。
「僕も着替えてくるから、それでいいだろ?」
待たせちゃうからだめだよ、なんて言おうとした私の言葉に知っていたように被せてくる。
そういう細かい所を分かってくれるのもまた、彼の長所なのです。
「帰ってきたら感想教えてね!」
「うん、むぎもリリちゃんと仲良くね」
「お姉ちゃんもね!」
私が着替えている時もむぎはずっとソワソワしていた。
どうやらリリちゃんがこの後少し早めにうちに来てくれるらしい。
そうして着替え終わった私が外に出ると同じようなタイミングで刀也くんとリリちゃんが黛家から出てきた。
「むぎー、リリちゃん来たよー」
「待ってすぐ行く!」
そうしてリリちゃんとむぎがうちに入っていくのを見送って私達も街へ繰り出すのだった。