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「これやったわ」
「やっちゃね」
「…じゃなくて、多分だけど迷った」
「やばいじゃんそれ」
「最初からそう言ってんだよなぁ…」
クリスマス当日、明らかに予定しかなさそうな彼女がバイトに来た時は驚いた。
その後に予定があると言われた時はそりゃあるだろうと思ったけどまさか道案内を頼まれるとは思ってなくて。
だからって一人で案内するのもまた気が引けて、気付けばふわっちも誘っていた。何やってんだ俺。
そして絶賛迷い中…らしい。案内するという名目で一緒にいるけど一度として目的地を伝えられた覚えはない。
「どこ行きたいんか言ってみ〜?」
「電飾を…見に行こうって話してて…」
謎のテンションになったふわっちと彼女の姿を横目に見つつそれっぽい場所を探す。
てか予定って何だ?俺たちがいて大丈夫なのか?…彼氏とかと会うんじゃないのかこういう時って。
「あきな」
「へ」
「駅の方にいるって、でも駅どっちか分かんない」
だから教えて、なんて俺を見て言う彼女。隣にふわっちいるのに、俺が話に参加しないからって話しかけてくれたらしい。
優しいんだよなぁ、俺のことなんて適当にほっとけばいいのに。…嘘、こうやって逐一気にかけてくれるのが彼女の優しさ。
例えそれを他の人にやっていると分かっていても、好きになる。
「ありがと、ここまでで大丈夫」
道案内をしていた俺と一緒に話していたふわっちを制して彼女は電飾の中に駆け出していく。
「メリークリスマス!いい夜を!」
あんなのずるい、ずるい…
「あーー…ふわっちちょっとこの後飯行かね?」
「いいねぇー」
クリスマスの夜、予定が埋まることはない。それでも今日はよく眠れそうだった。