「明那とエビオは課題やった?」
「…課題?」
「えっ!課題なんてあったんですか!僕知らないんですけど…マジで?」
「何で二人して知らないんだよ…」
もうすぐテストが近い、担任から提出物を出せだの成績不良者は補修だのホームルームで散々脅されるけど私はそのどれにも当てはまったことはない。
こう見えても私は優秀な生徒なのだ。
確かに授業は真面目に受けないしサボったりもするけどテストの成績が振るわなかったことはない。
うちには担任よりも厳しい刀也がいるのだ。
私が赤点でも取ろうものなら想像できないような酷い仕打ちをしてくることだろう。
…話を戻すが私もこの課題の存在を昨日知った。
私が呑気にゲームをしていたら刀也からあの課題のプリントやったのか、と悪魔のような一言を言われたのだ。
それからは地獄だった、出されていた課題全てをやらなければゲーム禁止だなんて暴君が過ぎる。
「見せてくださいよ立花さん!あの課題、僕には難しすぎる!」
「嫌なんだが…てかそのプリント提出しちゃって手元にないし」
「や、待って待って…俺その課題学校に置いてきたかも知れない…」
バイト終わりのバックヤード、みんな疲れているはずなのに超騒がしいのは何でなんだ。
「何の話してるん〜?」
「わー!ふわっち!課題のプリント!」
「助けてください不破さん!三枝さんはいいんでとりあえず僕を!」
ドンマイ先輩、入ってくるタイミングが絶望的に悪いのがいけないんだ。
明那とエビオは救いの手を求めるように先輩に要件を伝えようとしている。
てかエビオがしれっと自分だけ助かろうとしてる。…いけないんだぁ。
「あえ〜…とりあえず何があったか教えてもろて…?」
先輩の視線は私に向いている。
結局こうなるか、今日は早く帰れると思ったんだけどなぁ。
まぁあの二人に課題の話をした私の責任でもある。…しょうがない。
「なるほど、アキナとエクスが課題をやるのを忘れてたと」
先輩は終始私の話に相槌を打ちながら優しく聞いてくれた。
わちゃわちゃとまとまらなかった私達の会話が先輩の鶴の一声で収まったようで明那もエビオも先輩の話をちゃんと聞いていた。
「みんなで終わらせちゃいますか…店長の迷惑になる前に、な?」
「ふわっち頼りになるー!」
「流石不破さん!やっぱ不破さんなんだよなぁ!」
こんな空気感になったら帰るに帰れない。
暗くなる前に帰ってこいとは言われてたけど今回ばかりは守れなさそうだ。
「でも俺プリントない!」
「僕ありましたよ!」
「…エビオのプリントぐしゃぐしゃじゃん」
「んまぁ、これでやるかぁ…アキナは答え写して明日やりな」
プリントを探すだけでもひと騒動。
その後も先輩の教え方が地味に下手だったりエビオのプリントのシワが中々治らなかったりと色んな災難に見舞われた。
…が何とかプリントを終わらせる事ができた。
「んじゃー…帰りますか」
「うわー、腹減った!」
「確かに勉強した後ってお腹空くよな…」
男子高校生はおかしい、体力無尽蔵なのか。
今日はありがとうございました!それじゃ!と嵐のように去っていったエビオ。
少しは疲れた様子を見せてもいいんだぞ。
バイトと勉強をした後走って帰るって何だ。
「エクスがおかしいだけだから…」
「…それとも3組だからなのか…?」
「俺にも被害が及んでる!?俺は普通だから!やめて!」
小さな勉強会終わり、遅くなっちゃってごめんねとそのまま言いくるめられて結局先輩と明那に送ってもらうことになった。
エビオはあの様子だったしあまり期待してなかったけど。
「そういや先輩は大丈夫なんですか、次のテスト」
「ん〜?平気よ、こんなのね、俺に任せてもらえばね」
見た感じ説明下手だけど理解力はあるっぽいし、まあ大丈夫か。
問題は明那だ。…うん、肝心な時に失敗しそう。
「え、なに…俺なんかした?」
「いやぁ…」
「そっすね…」
「何なの二人して……マジで俺なにかした!?」
一人で慌てる明那を尻目に先輩と笑った。
まあ赤点持って帰ってくることは無いだろうし、元々そこまで心配はしてない。
「家もうすぐなんで、二人も気をつけて」
「あいーおつかれーっす」
「ま、また!」
適当な挨拶、それでも誰よりも気楽に挨拶をして私は家に帰るのだった。