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初詣、行くかぁ。
ぼんやりと思っては面倒臭いから、眠いからと後回しにしてn回目。
行こうと決意した時には周りは既に初詣を済ませていた。
どうしようか、一人で行くならやめたい。
とりあえずと僅かな期待を込めてメッセージを送った。
最悪の可能性は2つ、一つは寝ている、もう一つはもう行ってしまった。
それ以外なら私の勝ちだ。
晴れて初詣の刑に処される犠牲者はそうとは知らずにこの賭けに乗ってしまうのだ。
今回もまた私の勝ちらしい。
一人反応すればいいやと思っていたグループに送ったメッセージは全員が返信を返すという珍しい展開。
どんな幸運か誰一人として未だ外出さえせず布団もしくは炬燵から出ていないらしい。
状況同じすぎないか、私もずっと炬燵から出ていない。
「何処行くんだよ」
「初詣」
「一人でか?」
「残念だが…連れがいるんだよなぁ」
勝ったな、刀也は他に何も言おうとしなかった。
ちなみに私はさっきお前が桜華と行ったと自慢してきたこと憎んでるからな。
まあそれもこれでチャラにしてやる。
「立花出掛けるの?」
「初詣」
「着替えないの?着物あるよ?」
「いや、大丈夫」
「誰と行くの?」
「クラスの友達」
刀也を躱したら今度はお母さんがしつこい。
私から何かを聞き出すまで絶対に扉から退かない気だ。
「…お父さん起こしてくる」
こうなったお母さんを動かせるのはもうお父さんくらいしか居ないだろう。
多分部屋で寝てるだろうけど。
なんなら今日が元旦なことさえ知らなそうだけど。
「そうだ、後で二人で初詣行けば?」
そうこうしているうちに最後にメッセージを送った時間から大分経過していた。
これはやばい、言い出しっぺが遅刻するのは一番いけない奴だ。
「いってきます!」
勢いのまま外へ出た、これ以上ロスはしたくない。
一つ誤算があるとするならば、外に出ることを重視しすぎて防寒をろくにせずに出てきたことだろう。
走っている今はいいにしたって後で絶対後悔する。
そうして色々と思考を巡らせながら神社に向かって走る。
人通りは少ない、珍しく空いているようだ。
…まあ時間が時間だからか、ラッキーだけど。
「遅れました」
もしかしたら誰も来てないかも、なんて思った私が馬鹿だった。
ちゃんと指定した場所に全員いたのである、申し訳ない。
「大丈夫ですよ立花さん、僕も遅れたんで!」
「は、てか何そのカッコ…寒くね?」
「僕マフラー貸すよ!」
…これこそがやさしいせかい。
神社にはヒムとアルスとエビオがいた。
3人とも私が呼び出した初詣の犠牲者だ。
それとなく初詣に行くことを仄めかしたら良い返事が返ってきたから今に至る。
…全員揃うのは割と珍しいことだ。
普段は学校で一緒にご飯を食べるくらいで、個人との交流はあれどこの集団になると途端に決まった何かはない。
今回こうして誘ったのも何となくだ。
「あけましておめでとう」
目に入った賀正の文字にそういえばと思い返す。
メッセージ上で言ったかもしれないけど言葉にするのはこれが初めてだから許されたい。
「今年も宜しく」
新しく始まった一年に希望を懐きながら、新たな一歩を踏み出すのだった。