私が少しうるさくしてしまったのか、うぅんと唸って反対側を向いてしまった。さて、そろそろ起こそうか。
「刀也くん、ご飯もうすぐ出来るから起きて」
肩に手を当て少し揺らす。
「うぅん…あと、少しだけ……」
寝起きがいいほうの刀也くんが二度寝をしようとするなんて珍しいこともあるなぁとおもって、「仕方ないなぁ…少ししたらまた起こしに来るからね」と、きっと聞こえてないだろうけれど声をかける。
「うん……」と幼子のような声が帰ってきて、また柔らかな寝息が聞こえてきた。
じゃあ、先に立花を起こしますか。
立花の部屋に入って、立花を起こす。
「立花、ご飯だから起きて。立花」
立花はゆっくり時間をかけないとなかなか起きてこない。
「う…?桜華……?ごはん…もう…できたの……?」
「うん。もうすぐ出来るから、顔洗って準備してご飯食べよ?」
「う〜………ちょっと、まって、」
「うん、頑張って起きれる?」
そう声を掛けると、寝ていたベッドから頑張って出てきてくれた。ふらふらと寝起きでまだ足元が覚束無い。立花の手を取って洗面台まで向かう。立花に顔洗ったら先に椅子に座って待っててくれる?と声をかけ、刀也くんを再び起こしに行く。「しつれいしま〜す…」
どうにも慣れなくて、部屋に入る度に声をかけてしまう。
それでも部屋の主はまだ寝ていて。「刀也くん、おきて、ご飯だよ。立花も待ってるよ」そう伝えても、「やだ…もうちょっと…」と珍しく駄々をこねる。
「もう、ほら、早く起きよう?立花また寝ちゃうし、ご飯も冷めちゃうよ?」
「冷めてもご飯美味しいからいい……」
そう言ってまた布団に潜ろうとする彼。痺れを切らした私は、毛布を取った。どうやら、お気に召さなかったようで、じっとりと眠たげな目で私を見ては、私の手を引いて毛布と私を一緒にベッドの上に。そのまま、私を抱き枕のように引き寄せると毛布をかけてまた眠ってしまった。
存外力が強くて抜け出せず、彼の温かな体温で私も眠たくなってきてしまって、立花、ごめんねと思って私は意識を手放した。
「ん…」
寝返りを打とうとした身体は思うように動かず、心無しかいつもより温かい。
それはまるで人の体温のような温かさで、
この時はまだ、立花が僕のベッドに潜り込んだのだと思っていた。
僕はするりと髪に指を通し梳き、背中に回していた手に少し力を入れた。
でも、髪が少し長い気がして、僕の胸元を見ると、立花とは違う明るい茶髪が目に入る。
「…桜華?」
脳が停止した。いや、幼馴染とはいえ年頃の男女が同じ布団にいるって事案だろ!!!
僕の動揺が伝わったのか、
「とや、くん…?」
と、寝起きの少し掠れた色っぽい声。潤んだ瞳。
流石に刺激が強すぎないか…?
回していた手を解いて、起き上がる。
潤む瞳を擦りながら、ゆっくり上半身を上げる桜華。
「刀也くんやっと起きた…二度寝して、大変だったんだよ…?私も寝ちゃったけど…」
時計を見るともう12時でお昼ご飯の時間だった。
桜華もそれに気づいたようで、
「私、ご飯温め直してくるから着替えて、顔洗ってくるんだよ?」
そう僕に告げて下へ降りていった。
言われた通り適当に着替えて、洗面所で顔を洗ってリビングに行くと
「もー刀也遅い!お腹減ってんだけど!!」と元気な声。
「お前はいつもだろ」
立花と桜華はもう席についていて僕を待っていたようで、
遅れてごめん、と謝ると、良いよ疲れてんでしょ?と桜華。
まぁ、最近少し忙しかったですから…
ん、部活大変そうだもんね…それじゃ、食べようか。
「いただきます」
重なる声と食事の音。他愛ない日常がそこに。
2020/09/13
2020/10/08