カフェけるべろす

駅から少し離れたところにある、カフェけるべろす。学校の人にバレなくて、時給がそこそこいいここは私のバイト先で、良くしてもらっている。制服が和装の給仕服なのもとても可愛くて、でもやっぱり誰にも見られたくなくて一人心を躍らせながらここで仕事をしている。ちなみについ最近ハヤトさんにはバレた。立花達には何曜日にバイトしてるから先に帰っててとだけ言った。バイト先は教えてない。今日は店長のとこさんと私だけの日で人もそんなに居なく心地の良いカフェBGMの中お皿を拭いていた。
カランコロンと、ドアベルの音がなり「いらっしゃいませー」と声掛け席にご案内しようとドアに向かうと、見慣れた橄欖石のような双眸と目が合う。「立花」と彼女を呼ぶ声が後ろから聞こえ、そちらを見ると、さっき目が合った瞳と同じ色を輝かせた瞳とまた目が合った。そちらは驚きが隠せないようで、目を見開いていた。私は動揺を隠すために、「お席にご案内します、此方へどうぞ」と案内をする。席へ案内して、メニュー表を渡して、「ごゆっくりどうぞ」の一言と笑顔を添えて店長の元へ帰る。「店長接客変わって貰えませんか、幼馴染が来てて、あの私の代わりに!美味しいスイーツ買ってくるので!お願いします!」「どうしてそんな風なん自分?別に恥ずかしい訳やないやろ?」
「う、うぅ……その、こんな可愛い格好してるの見られるのが恥ずかしくて……」
「ふぅーん?好きな人に見られるんが恥ずかしいなんてかわいらしいなぁ?」
「別にそういう訳じゃ…!!!」
チリンとなる呼鈴。店長の方を見ると、行ってこいと言わんばかりの顔。
うぅ……行きますよぉ……
「ご注文はお決まりですか」
目を輝かせる立花と何か言いたげな刀也くん。
「桜華可愛いね、ね、刀也。」「ええ、まぁ、似合っていますね」
「あ、ありがとう。えっと、そういえば、ご注文は?」
「私はガトーショコラとオレンジジュース」
「僕はショートケーキとコーラフロートで」
「かしこまりました。少々お待ちください」
注文を書き留め店長に渡す。
「ほな、ちょっと待っとってな」と言いながら、ケーキと飲み物を持ってきてくれる。
「あ、これ他のお客さんには秘密やけどおまけ。桜華ちゃんの彼氏とその妹やろ?感想貰ってきてくれん?」
「幼馴染です!!!」
もう!店長も面白半分に私をからかってくる。ケーキとジュースとおまけの乗ったトレーは少し重たくて、平然と持ってのけた店長のことを内心尊敬しながら2人の元へはこぶ。「ご注文のガトーショコラとオレンジジュースとショートケーキとアイスコーヒーです。あとこちらのプリンは当店の店長からのおまけです。是非店長に感想を言ってあげてください。それではごゆっくりどうぞ」
一礼して店長の元に戻る。
店長はまださっきのことをひきずっていて、「なんやぁ、彼氏やないんや…お似合いなのになぁ…」なんて言っている。私はカウンターに項垂れて、「私だって、そうなりたいですよ…」って小声でひとりごちるのだった。
私の声が聞こえてるのか聞こえてないのか、店長はふーんって言ってお皿洗いに戻っていった。休憩と言われ、カウンターにクリームソーダを置かれ、私の心はすぐにうきうきに戻るのだった。クリームソーダのアイスにスプーンを入れて掬う瞬間にカラン、コロン、とぶつかり合う氷の音が好きだった。口の中にバニラアイスの甘みが広がって、メロンソーダのパチパチが口の中を刺激する。そんなメロンソーダが好きだった。私がメロンソーダ休憩をしている間に、どうやら2人は帰ったようで店長がお会計をしてくれたようだ。店長にレジごめんなさいと謝るとええよええよ、休憩取らんと労基に訴えられてまうからな〜なんて冗談を言っていた。ユーモア溢れる店長だなぁと笑いながら思った。幼馴染2人が来たことなんて既に店長の冗談で忘れていた。そんなバイトの日。

2020/09/15