気分屋とカフェとおまけ

「今日、一緒に喫茶店に行かない?こころが働いてるところなんだけど…」
珍しく僕を誘ってくる立花。
「社誘えばいいんじゃないですか」
「は?刀也忘れたの?今日は、桜華バイトで一緒に帰れない日だけど?」
「は、バイト?」
「は〜?刀也、桜華の話聞いてなかったの?桜華バイト始めたって。」
「へぇ、そうなんですね」
全く記憶にない。多分、完全に別のことに集中していたんだろう。こんな時ばかり、集中していた自分を恨んだ。
どうせ、帰っても勉強するんだ。帰りに喫茶店に行っても別にいいだろう。
「行きますか、喫茶店」
「本当?楽しみ〜」
「場所は分かるんですよね」
「ううん。喫茶店の名前しか知らない。」
「は?僕が行かなかったらどうするつもりだったんだよお前!!」
「今度桜華と一緒に行こうかなって」
「お前は本当に……」
「私はいつもこんなんでしょ〜」
「は〜……名前は?」
「なんの?」
「喫茶店しかないだろ」
「あぁ!けるべろすだって、ひらがなで」
「なんか、物騒な名前ですね…地獄の番犬の名前の喫茶店って…」
地図で調べると、学校から程よく近い場所にあることがわかった。地図に従って立花と一緒に喫茶店に向かう。店に着くと、古風な外観でなかなか良さそうなお店だと思った。立花は直ぐに扉を開けたので僕も立花の後ろについてお店に入る。ドアベルがカランコロンと鳴ったから、少し待てば店員が来るだろうと店内を見ていたら、「いらっしゃいませー」と聞きなれた声。やはりというか、そこに居たのは桜華で、立花に状況を教えてもらおうかと思わず、「立花」と名前を呼んだ。立花も少し驚いていた。
「お席にご案内します、此方へどうぞ」という声で我に返り、彼女について行き席に座る。渡されたメニュー表を眺めつつ、立花と顔を合わせる。
「どういうことだ」
「私も知らなかったって!!何曜日にバイトとするのは聞いてたけど、何処でするかは聞いてなかったよ……でも、制服めちゃめちゃ可愛いね!和服メイドって言うのかな?似合ってるね桜華!紫色の着物だし、帯留め見た??黄緑色の硝子玉みたいな飾りついてたよ。めちゃめちゃ可愛い〜!ヘッドセットもついてて本当に大正時代の給仕さんみたいな感じだね」
「あぁ…まぁ、似合ってはいたな」
「ほんと素直じゃないよね刀也…普通に褒めればいいのに可愛いって」
「お前なぁ…とりあえず、そんなことよりなに食べるか選べよ…」
「ま、そうだね。え〜どれも美味しそう〜一番人気のガトーショコラとオレンジジュースにしようかなぁ…刀也は?」
「あー…ショートケーキとアイスコーヒー」
「ショートケーキ好きだもんねぇ」そう言いながら呼鈴を鳴らす立花。しばらくすると、また桜華がきて、「ご注文はお決まりですか」と問いかける桜華にキラキラと瞳を輝かせて「桜華可愛いね!ね、刀也」と僕に振る。僕もまぁ、正直に動揺しつつ「えぇ、まぁ、似合っていますね」と答える。少し顔を赤らめた桜華は照れながらも「あ、ありがとう。えっと、ご注文は?」とちゃんと仕事に戻っていた。「私はガトーショコラとオレンジジュース」「僕はショートケーキとアイスコーヒーで」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
そう言って去っていった彼女。唐突に立花が「そういえば、紫色と黄緑色って私たちの色だよね。桜華、それ分かっててあの着物着てるのかな」なんて言う。もしそうだったら僕はどんな顔をすればいいのだろうか。そうだったらいいななんて淡い期待を抱きつつも、「さぁな」と素っ気なく返す。「ふぅん」と意味ありげな立花とタイミングよく運んでくる桜華。「ご注文のガトーショコラとオレンジジュースとショートケーキとアイスコーヒーです。あとこちらのプリンは当店の店長からのおまけです。是非店長に感想を言ってあげてください。それではごゆっくりどうぞ」と慣れたように言って伝票を置き一礼をして去っていった。去っていったほうを見ると、カウンターでメロンソーダを飲んでいる桜華が居て嬉しそうな桜華にすこしこっちまで嬉しくなった。美味しいショートケーキとプリンを頂いて僕らは会計を済ませようとレジの前へ行くと店長さんと思われる綺麗な人がいた。
「プリン、美味しかったです。また来ます」と言うと「ほんまに?嬉しいわぁ〜!桜華ちゃん見にまたおいでな、彼氏くん」
立花はニヤニヤしていた。
突然そう言われ、動揺して咄嗟に
「幼馴染です!!」と訂正する。いつかはなりたいとは思っているけど、彼女も僕も立花が多分一番だと何処かで思っている。
「なんや、誤魔化し方も同じなんやなぁ…」と少し小さな声で言っていた。聞こえたが僕は知らないふりをした。お会計を済ませて、立花と帰路につく。「同じだってね?」意味ありげに笑う立花をみて、流石双子だなと賞賛の拍手を送るのだった。

2020/09/15