「桜華」
刀也くんの声と、頬を抓られる感覚。
「へ、」
「信号」
言われた方を見ると、横断歩道の向こう側には立花がいて、赤く点灯してたライトは青色に点滅していた。
「あー…ごめん、ぼーっとしてた…先に行ってて良かったのに…ごめんね。」
あーあ、迷惑かけちゃった。
そう少し俯いて、ぼーっとしてると、両頬に手を添えられて、少し強い力で頬を抓られた。
「いひゃい…」
「なんか、余計なこと考えてるだろ」
図星だった。
「そんにゃことないひょ」
「嘘だ。その顔、悩んでる時の顔だぞ」
抓っていた手は、そのまま私の頬を包んで、心配そうな泣きそうな顔をして、「僕が頼りないのは分かってるけど、心配くらいさせろよ…相談でもなんでも聞くから、そんな顔しないでくれよ…一人で抱え込むなよ…なぁ…」
「ごめんね、そんなこと思わせちゃって…心配かけたくなくて」ヘラりと笑う私に更に悲しそうな顔をした。頬に添えられた手は気づけば私の手を取っていて、赤に変わっていた信号はまた青になっていた。向こう側にいた立花は、私達が手を繋いでるのを見て、刀也くんの隣じゃなくて私の手を取った。双子の間でまるで逃がさないと言わんばかりに手を取られる。私はまだ、ここにいていいらしい。「ありがとう」と言う声は閑静な住宅街と月に溶けて消えていった。私の言葉に満足そうな双子といつか終わるその日まで、歩み続けるのだ。二人の手は暖かかった。
2020/09/20