私の返事を聞かず行ってしまった桜華はどこか様子がおかしかった。何があったんだろう。私はとりあえず忘れないうちに刀也に伝えに行く。
「刀也」
「ん、あれ、桜華は?」
「先帰っててだって」
「はぁ?なんであいつ同じクラスの僕に言わないんだよ」
「先生に呼ばれたんじゃない?」
「そんな様子なかったけど」
「えぇ〜まぁ、なんかしら用があんでしょ。あ!もしかして告白とか?」
「はぁ!?」
「ちょ、刀也声おっきいって冗談だよ冗談」
「お前が変な事言うからだろ」
「…桜華がずっと居てくれる訳じゃないんだよ」
「…うっせ、わかってんだよそんなこと」
「幼馴染だからって余裕ぶってるのも今のうちだからね」
「あーあーあーなんも聞こえない」
「はぁ…まぁ、先に帰れって言われたから帰ろうよ。それとも、刀也は待つ?」
「あー…おまえ、テストもうすぐだぞ。」
「…そゆことね、わかったわかった。刀也様の仰せのままに」
持っていた鞄を置いて刀也の席の前に座る。隣には桜華の鞄が置いてある。
鞄から教科書とノートを出して、刀也にテスト範囲を教えてもらう。
二人して集中していると、ガラガラと扉の開く音。
そっちを見ると桜華がいて、
「あれ、二人ともまだ居たの?」
「刀也に勉強教わってた」
「そっか、テスト近いもんね」
「桜華は何してた?」
「んー?園芸部でちょっとトラブル。最近、花壇が荒らされてるっぽくて植え替えしてたの」
「そんなことがあったんですか」
「うん。害獣かなとも思ったんだけど、ちょっと、その、人の足跡だったから誰かが意図的にやってるなぁって。多分、明日には犯人わかると思うんだけどね」
「ひゃ〜こわ〜〜桜華敵に回すと酷い目に合うのに〜」
「そんなことないよ…もう、立花ってば」
「それじゃ、帰りましょうよ」
「ん、わざわざ待っててくれてありがとう」
「別に立花の勉強見ていただけですから」
「ふふ、それもそっか」
桜華の鞄を持った刀也から鞄を受け取る桜華。楽しそうな二人と一緒に教室を出る。
ちょうどタイミングよく三組の扉から出てくる女の子。
「黛くん」
刀也のことを呼ぶその子。
明らかに眉間に皺を寄せる刀也。
「なんですか、僕帰るところなんですけど」
言葉が少し強い。機嫌が悪い。
「まぁまぁ、お話聞いてあげてきたら?私たち待ってるよ」
宥めるように言う桜華。怯んでいた女の子は勢いのまま
「黛くんのことが好きです。付き合ってください!」なんて、私たちの前で堂々と言い放つ。わぁ〜度胸すご〜
一瞬の静寂の後に、
「すいません、僕貴方の事知らないんで」
「それなら!友達からでもいいので知って貰えませんか!」
「ハッキリ言いますけど、僕が貴方に興味無いのでお引き取り下さい。桜華、立花、帰るぞ」
「えぇ、刀也くん女の子から刺されても知らないよ私…」
「こんなんで刺されてたまるかよ…」
「刀也ほんとに気をつけてね…」
「お前もかよ」
女の子は下を向いたまま拳を強く握りこんでいた。
「なんで、」
振り返る私たち。
「なんで、なんでその子なの」
その子、とは桜華のことだろうか
「幼馴染だから?同じクラスだから?女の子だから?そんななんの取り柄も無さそうな女のどこがいいの!!黛くんにその女は釣り合わないよ、私なら黛くんに相応しいよ!ほら、私と付き合ってよ、それとも、その女に誑かされてるの…?なら、その女殺せば私を見てくれる…?」
明らかに様子がおかしい。
狂ってるこの女。
「色々言ってますけど、そんなこと言うあなたは僕のこと受け止めてくれるんですか。」
彼女にそう問いかける刀也。
「当たり前だよ!刀也くんの傍にずっといるよ!」
「僕の何を知ってそんな自信があるんですか」
「っえ…」
刀也の快進撃が始まるようだった。
余計なこと言わないといいんだけど、私の隣にいる桜華は何かを察したのか手で顔を覆い始めた。
「知ってます?彼女、僕のために時間を割いてくれるんですよ。呼んだら僕のところに真っ直ぐに来てくれて、僕んちに来る時絶対に僕の好きなスイーツ買って来てくれるんですよ。それに僕の居ない時に立花のこともリリのことも見てくれてますよ。それに、彼女が僕を必要としてる訳じゃなくて、僕が、彼女を必要としてるんです。分かったら消えてくれます?」
そうハッキリ告げると、涙を潤ませながら去っていった。
「刀也くん、言い過ぎ……」
もう、ショート寸前のような真っ赤な顔の桜華。いやぁ、見せつけてきますね…
「本当のことですよ、ほら、さっさと帰りますよ。テスト勉強するんでしょう?」
真っ赤な顔の桜華の手首を掴んで進んで行く刀也と桜華の背中を押して私は「さあー帰ろー」と呑気に言うのだった。
2020/09/21