痴話喧嘩と置き土産

ヒムと遊んだ帰り、「ただいまー」と自分の家に入った時だった。
「っ〜〜刀也くんなんてもう知らない」
そんな桜華の声と階段を下ってくる音。
「あ、立花おかえり。私帰るから刀也くんよろしく」
「え、うん」
そう淡々と告げて帰っていく桜華。
二階に上がって、扉が開けっ放しになってる刀也の部屋を覗くとテーブルに突っ伏してる刀也がいた。
「珍しいね、桜華怒らすなんて」
「それは、僕も重々分かってんだよ」
「で、何やらかしたの」
弁明させるつもりなんてなくて
直接、そして逃がさないように聞く。
「あー…キスした」
「ふーん…は?まって?刀也と桜華って」
「付き合ってねぇよ…これはほんとに僕が悪かった…」
まぁ、別にちゅーしたくらいじゃ桜華は
どうしたの?くらいだと思うんだけど…
「なんて言い訳したの」
「ごめんしか言えなかった…」
「あちゃー…それは、ダメだよ…」
「いや、本当に、気づいたらしてたんだよ…節操なしって言われたらそりゃそうなんだよ…明らか僕が悪いから謝るしかなくないか…?」
もう混乱で言葉が自分を責めるものになり始めている。
「じゃあ、刀也がさ〜例えばだよ?ほんとに例えばの話だからね?」
「…なんだよ」
「刀也がずーっと好きだった人にちゅーされたとするじゃん。それにごめんって返されたらどう思う?それってなんか、虚しくない?なんか、ちゅーしたこと後悔してるみたいじゃん?」
「いや、あれは確かに僕の意思で、僕の理性が無かっただけで、やっちまったとは思ったけど最低かも知んないけどめちゃめちゃ嬉しかったからな!?」
「それ本人に伝えてきなよ」
「おう、そうする」
項垂れていた兄は彼女との関係を取り戻そうと乱暴に玄関の扉を開いて飛び出していった。でも、桜華を泣かせた罪は重いのでガクくんとむぎちゃんに知らせを入れる。
当分こってり搾られるといい。
冷蔵庫に入っている桜華が持ってきてくれたであろうお菓子を食べて、私の気分は上々なのだった。

2020/09/22