懐かしい、夢、夢。

夢を見た。小さい時の夢。
あれは、多分小学生の時。
3年生くらいのことだと思う。
担任の先生が結婚した。
小さな私たちは結婚がどのようなものなのか
教えてもらった。
大切な人とずっと一緒にいることよ
という先生の左手の薬指には、
きらりと光るリングが嵌っていた。
それを聞いた立花が、
「大切な人と結婚…なら、私は桜華と刀也とだね!」
「そうだね」
楽しそうに嬉しそうに話す私達に
困り顔の先生。
「立花ちゃん、残念だけど女の子同士は結婚できないの。あと、兄妹でも結婚出来ないのよ。残念ね…」
「そんなー!」
「でも、立花ちゃんにも桜華ちゃんと刀也くん以外の大切な人に出逢えるわよ。私みたいにね」
そう言って立花の頭を優しく撫でる先生。
そんな立花の様子を見ていた私の手を取って、さっきまでずっと黙っていた刀也が
「僕も桜華ちゃんのこと、大切な人だって思ってるからね。」
「私も刀也くんのことも立花のことも大切な人だよ」
そう笑顔で言うと
「じゃあ、僕と結婚してね、桜華ちゃん!」
眩しい笑顔で私に告げた刀也くん。
私はその言葉になんと返したのだろうか
ぼんやりとした頭では何も思い出せない。
いつもより少し早い時間。起き上がって、
洗面所に向かうのだった。

珍しく夢を見た。昔の夢だ。
小学三年の、確か、
担任が結婚した時だったと思う。
まだ何も知らない僕達に、
結婚とは何か教えてくれた。
熱心に聞く立花とそんな楽しそうな
立花をみる桜華。
僕は先生の話を聞きつつ、
大切な人という言葉を反芻していた。
立花は勿論家族として大切だ。
でも、桜華は?
確かに桜華は大切な人で、
ずっと一緒に居たい。
あの頃の僕は、その大切にしたいという
想いをその感情の名前を知らなかった。
だから、桜華に、桜華ちゃんの手を取って
妹に、立花に負けないように
「僕も桜華ちゃんのこと、大切な人だって思ってるからね。」と伝えた。
「私も刀也くんのことも立花のことも大切な人だよ」
そう笑顔で返された。だから僕は、
「じゃあ、僕と結婚してね、桜華ちゃん!」
と、叶うかも分からない約束を言った。
「私でよければ、ずーっと一緒にいてね」
そんな桜華ちゃんの言葉を最後に、
この夢は覚めてしまった。
「あー…あいつはこんな約束覚えてないんだろうな……」
そう独りごちて
暖かい微睡みの中に落ちていった。

2020/09/23